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高野和明   「K・Nの悲劇」(文春文庫)

現在少子化が大きな社会問題になっている。年間生まれてくる胎児は凡そ100万人。

しかし、その裏で34万人が中絶によって殺されている。日本の死因で最も多いのはガンではなく、中絶である。5人に一人は中絶によって殺されているのである。

 犬、猫が安楽死させられる数は30万匹弱。つまり人間の胎児殺しの方が犬猫殺しより多いのである。中絶が亡くなれば、一時的かもしれないが、少子化という問題は無くなる。

 この小説に登場する磯貝という精神科の医師は、元々は産婦人科の医師だったのだが、途中で精神科医師に転向している。

 磯貝が産婦人科医師のとき、妊娠二十一週の女子高生の中絶手術をした。二十一週ともなると掻把というわけにはいかなくなる。子宮を収縮させ通常の分娩に従い、胎児をとりだす。摘出した胎児は30センチほどだが、手もあり足もあり、完全なる人間となってとりだされる。しかし、とりだしたときには心臓は止まっている。その姿をみると、誰だって殺人をしていると思ってしまう。

 この少女が、退院後一週間たって精神科にやってくる。水子の泣く夢に悩まされたからだ。それで磯貝は産婦人科から精神科に転向した。

 この作品は、実質殆ど仕事がないフリーライターの主人公夏樹修平が、妻果波を妊娠させたが、とっても出産費用や子育て費用が創れないということで、妻を説得したかたちをとり中絶を決心する。しかし、中絶手術のとき妻は大声をあげ叫び失神し、中絶は一時見合わせとなる。

 その果波には、中村久美という3年前に仙台の神社で倒れ亡くなった女性が取り憑く。
久美は妊娠したが胎盤が剥がれる、胎盤剥離にかかり、神社で悲観してそのまま倒れ亡くなる。もちろん胎児と一緒に。

 物語は憑依というのは世の中にはなく、あくまで精神病として医学的に治そうとする磯貝と、最初は磯貝の意見に従うが、果波の憑依をされたと思われる言動に憑依は現実にあると信じるようになった修平との葛藤が軸になってホラータッチで描かれる。そして結果は判然とせず終わる。

 しかし、やはり本当の軸は、一時の快楽に溺れ子供を身ごもるが、特にその後の男がとる責任逃れ、女性と一緒に子供を育てようとする覚悟の無さ、酷さを語っている。

 死因の断然一位は中絶での胎児殺しである現実を我々は認識せねばならない。

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| 古本読書日記 | 05:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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