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高野和明    「幽霊人命救助隊」(文春文庫)

 主人公の裕一は2度の受験に失敗、世の中を悲観、それで首つり自殺をする。昇天する途中の山の頂で、昇天できずに彷徨っている別の3人の死者にであう。

 その3人は裕一同様、市川服毒、八木短銃、美晴飛び降りと、いずれも過去に自殺をしている。

この彷徨う4人のところに、突然神様が舞い降りてきて、49日間に100人の自殺志願者を自殺させないで救ってあげたら、4人を天国に導いてやると言われる。

 これは大変。まず自殺志願者をどうやって探すのか、幽霊がどうやって志願者とコミュニケーションをとって、自殺を思い止めさせるか。どうするのかと思って読み進める。

 幽霊には、自殺しようと思っている人は黄色の信号が被さって見え、自殺実行決意した人は赤の信号が被さって見える。

 また幽霊は、自殺志願者の心の中に入り込み、自殺志願者の心のうちがわかる。そして特殊なメガホンを持ち、それを使って叫ぶと志願者だけに声が届くようになっていた。

 黄色や赤の信号をまとっている人は、新宿など大きなターミナルへゆくと、群衆のなかに容易に見つけることができる。

 この作品は、自殺しようとする動機にはどんなことがあるのか読者に提示している。自殺者は交通事故死の3倍で、年約3万人もいる。いじめなどが原因で、社会は少年少女、思春期の若者の自殺に焦点があてられるが、これらの年代の自殺者は300人程度で少なく、圧倒的に多いのは中高年、老年の自殺者。

 自殺の原因で多いのは、病苦、そして生活の困窮、家族の問題である。

4人の自殺回避の策は、これはという奇策があるわけではなく、鬱などメンタルな問題があれば、優秀な診療内科医院を、窮乏については、役所、弁護士などを紹介するという王道をゆく。

 4人は説得しながら思う。自分たちも4人と同じような幽霊が現れ、自殺の直前に説得してもらったら自殺をせずに済んだと。
 だから百人の救出を達成、天国から神様が迎えにきても、彼らは拒否し、更に幽霊のままで自殺志願者を救うことを決意する。
 テーマの重さとは異なり、筆致は軽妙でユーモア満載。しかし内容は深い。

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