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高野和明    「6時間後に君は死ぬ」(講談社文庫)

心理学を学び大学院受験浪人している山葉圭史は、将来非日常な出来事を体験する人のその体験を見ることができる。

 この本は短編作品集なのだが、本のタイトルにもなっている作品は、美緒という女性が六時間後にナイフで胸を刺されて死ぬ姿が圭史に見え、それが防ぐことができるかが時間の流れとともに、スリル感が増幅してくる物語。最後に収められた作品は、やはり同じ圭史と美緒の物語なのだが、3時間後に予言者の圭史が亡くなるという筋立て。緊張感がどんどん高まり、なかなか読み応えのある物語に仕上がっている。

 この2作ももちろん面白いのだが、私が気に入ったのは2作目の「時は魔法使い」だ。

29歳になる主人公朝岡未来はプロットライターをしている。あまり世の中に知られている職業ではない。それはプロットライターでは生計が成り立つことがないからである。

 小説の筋立てやテレビ番組の企画を書く仕事である。採用されれば、報酬が数万円程度ある。筋立てや企画書が修正につぐ修正がなされることがしばしば。その労働は金にはならない。それでも、目指している脚本家になるために、通り道と考え頑張っている。

 だからいつも財布の中味はピーピー。今の全財産は九千円。これでは生活できない。未来は意を決して、新宿の風俗店に勤めることを決める。そのとき公衆トイレにはいりさめざめと泣いた。

 いったい今何をしているのか。何のための人生だったのかと思い。

それで、風俗店に勤める前に自分が過ごした家があったところに行ってみようと思い立ちでかける。すでに両親は無く、実家のあった場所には古ぼけたビルがたっていた。

 未来は9歳のときにかくれんぼうをしていて、神社にあった防空壕に隠れていてそのまま失踪してしまい、2日後にその防空壕から発見されるということがあった。未来はその2日間の記憶が全く無かった。

 未来は街の風景は20年前と全く違っていたが、防空壕はそのままあり、懐かしくなり中にはいってゆくと少女がいる。「かくれんぼうをしている」と少女が言う。その少女は20年前の未来だった。
 未来は9歳だったときの自分を連れ出し、一緒に買い物をしたり、風呂に入ったり、食事や美容院に行ったりして楽しく過ごす。

 その途中で未来が9歳の未来に聞く。
「みきちゃんは大人になったら何になりたいの?」と。未来が答える「女医になりたい」と。

今の未来がぐっと詰まる。可哀想に20年後は、明日の生活にも困るような状態になっちゃうと。
 そして、また防空壕に帰らねばならない時がある。その時、9歳の未来は一緒にいるのが29歳の自分であることをすでに見抜いていた。

 9歳の未来が言う。「もうお姉さんとは会えないの。」今の未来は思う。こんなみじめな自分に会っても仕方がないじゃないか。
 しかし言う。「会えるよきっと。」
9歳の未来が言う。
 「よかった。また会おうね。だってお姉さん優しいんだもん。」

よかったね29歳の未来。そしてめげずにがんばれ!と本の中の未来に声援をしている私がいる。

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