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海堂尊   「スリジエセンター1991」(講談社文庫)

この作品、1991年の出来事を描いている結構古い作品。海堂作品では珍しく、長い間文庫化されないで残っていた作品である。この文庫とほぼ同時に文庫かされた「スカラムーシュ・ムーン」が殆ど今を扱っているのだが、「スリエジセンター1991」と繋がっていて面白い。

 「スカラムーシュ・ムーン」で、大阪府村雨知事の野望に乗じて、ワクチンセンター設立を目論む彦根新吾は。この作品では東城大学変わり者医学生として登場する。また、彦根が利用をしようとした天城資金の天城が、この作品の主人公となる。また天城の心臓手術を受ける日本最大の自動車会社のスギモトモータースの会長杉本も登場する。

 医学的な専門的なことで、自分で書いていても殆ど内容が不明なのだが、狭心症を繰り返す患者が両下腿静脈瘤を発症、これに対し行われる手術というのが冠状動脈バイパス手術。この手術に使うのが大腿部の太い静脈である大伏在静脈。しかし再発するケースが結構ある。そして、大伏在静脈は一度使うと、二度目は無く、手術での対応ができない。

 一方ダイレクト・アナストモーシスという手法は肋骨裏側の内胸動脈を使い、両下腿静脈瘤は完全に治すことができる。

 しかしアナストモーシスは超難度の技術が必要で、日本でできるのは、東城大の佐伯大学病院長がモンテカルロから招聘した天城教授しかできない。この天城は金亡者のような医師で、手術費用は患者の所有財産の半分を頂く。そして、その費用で、モンテカルロの高級ホテルのスィートルームを居住地にして、毎晩カジノに出入りする生活をしている。

 佐伯病院長は、この天城を使い、天城をトップにしたスリジエハートセンターを設立して、病院の利益を更に増やそうと考えている。

 「白い巨塔」のように、色んな欲望、策略が渦巻き、佐伯の野望は挫折し、引退においこまれる。そこも作品の読みどころであるが、佐伯の挫折の原因にはもっと大きな物語が背景にある。

 天城は公開2回、非公開1回、計3回のアナストモーシスを使った手術をする。この中には危なかったが何とか成功したスギモトモータースの杉本会長に対する手術もあった。

 3回目の公開手術は国際心臓外科学会の会場で行われた。

この時、患者が悪性過高熱症にかかり、三十九度二分まで上昇。麻酔科の医師が用意しておくべき解熱剤ダントロレンが用意されてない。

 天城はうろたえ手術に対する自信が無くなる。そして最初のステージで失敗。手が震え、天城はもう無理と手術を諦めようとする。この時、手術助手を務めていた、天城の敵だった高梨医師が、強烈な叱咤をする。

 これで目覚めた天城が、患者に向き合い、最後の力をふり絞り、リカバーをする手術に成功する。会場は大拍手で埋まる。

 これでスリジエセンターは実現と思ったのだが、天城は3回目の手術は失敗だったと佐伯に辞表を提出して日本を去りモンテカルロに戻る。そして、突然死をする。

 この天城の最高峰の技術を使った手術が、物語の主軸になっていて、感動を与える。

 少し、大病院のどろどろした争いを描きすぎ、天城の物語の印象が薄くなったのが残念。

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