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沢木耕太郎    「銀の森へ」(朝日文庫)

朝日新聞紙上に毎月連載されていた沢木の映画評を収録。90作品の映画評が収められている。

あとがきで沢木が書いているが、この映画評では、読んでいる人が、ぜひこの映画をみてみたいと思わせるように書くことに腐心したと。

 沢木が心憎いのは、ほんの少し思わせぶりにストーリーや見どころを書く。しかし、絶対に最後のクライマックス部分は書かない。
 そのおもわせぶりのところの描写が卓越していて、どれも素晴らしい作品で見ないと損する気分にさせる。

 しかし、90作品もみれば、どの作品も素晴らしいなんてことはあり得ない。この映画評はいけない。もっとだめなものはちゃんとだめと書いてもらわなければ。

 この映画評の姉妹本。「銀の街から」に、唯一けちょんけちょんにけなされている映画があり、びっくりした。

 それが宮崎駿作品の「風立ちぬ」である。すべてが素晴らしい作品ばかりという本のなかでは移植で際立っている。へそまがりな私は「風立ちぬ」だけは見なければと思ってしまう。

 この本での映画評は、すべての作品が、紙上連載中に封切られたり、その時代に創られて映画であるが、その中に1作品だけ旧作がある。

 ヘップバーン主演の超有名作品「ローマの休日」である。沢木は映画館で、ビデオで何回も繰り返し見ている作品で、細部にわたるまで、頭に刷り込まれている。

 そんな作品のどこを今さら見て、批評しようとするのか。

沢木は、この作品のどこかに落ち度や瑕疵がないかと眼を皿のようにしてみる。全く瑕疵は無いと思えたところで、唯一の瑕疵を発見する。

 ヘップバーンがスペイン広場でアイスクリームを食べる場面。そこでちらっと映し出される時計の針が、ヘップバーンが演じるアン王女がそこにいることは絶対に無い時間を指している。

 沢木はその発見に快哉を叫ぶ。
その発見に沢木はすごいものだと思う前に馬鹿じゃないのとつぶやく自分がいる。

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