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沢木耕太郎     「銀の街から」(朝日文庫)

高校時代は本当にたくさんの映画を観た。後で数えたら700本を超えていた。友人の家が映画館を経営していて優待券をわけてくれたからである。大学時代もこう高校時代ほどではなかったが、それなりの数の映画をみた。

 しかし、社会人になってからは全くというほど観なくなった。仕事や仕事仲間にとりこまれたからである。映画は2時間くらい終わるまでにかかる。それが大いに無駄な時間と思えるようになるからである。ごくたまに、嫁さんに誘われ観にはいったが、殆ど始まりと同時にいびきをかいて寝入ってしまい、嫁さんにいやみをたらたら言われることになる。

 この映画評は、朝日新聞から依頼された沢木が毎月1回、3年に渡り紙上に書いてきたものである。

 この映画評を書いていたときかどうかはわからないが、ある雑誌で、映画評論家の大家淀川長治から指名されて沢木が断り切れなくて対談することになる。沢木はもちろん映画は好きなのだろうが、それでも淀川からみればひよっこ同然の俄か評論家。殆ど沢木は聞き役と化す。

 その対談で淀川は沢木に念を押すように何回も繰り返す。
「映画を見捨てないようにしてください。」と。

沢木はこの連載の途中で、朝日新聞紙上に小説を連載することになった。朝日新聞では、一人で2つの連載を載せることはできないという不文律により、映画評は終了する。

 すると、他の仕事に比重がかかり、映画に愛情いっぱいあふれた映画評だったのに、全くといっていいほど映画をみなくなる。

 飛行機にのると、映画がかかる。
そのとき、いつも淀川の「映画を見捨てないようにしてください」という言葉がよみがえる。

 そして思う。淀川さんが指摘されたように、自分は映画を見捨ててしまったかと。
でもその直後彼はつぶやく。
 「映画を見捨てたのではなく、映画に見捨てられたのだ」と。

 私も完全に映画から見捨てられてしまったとしみじみ思う。

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| 古本読書日記 | 06:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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