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内館牧子    「終わった人」(講談社文庫)

私の住んでいる市の隣の地方都市でも、最近は朝からやっている居酒屋がある。この居酒屋が夜よりにぎわっている。老人や会社を退職して行き場を失った人たちがやってくるからだ。

この物語にあるように、退職した人が声をあげて言う。
「会社に行ってたときは、朝まで飲んだ。退職してからは朝から飲んでる。」と。

 物語は大手銀行から子会社に転籍させられ、63歳の定年をもって退職した男性を主人公として扱う。その取扱いは世の中で喧伝されている典型的な退職人間。少し、ステレオタイプの作品のように感じる。

 私は、真面目に会社に勤めたが、正直勤めは心底いやだった。ぐうたらな毎日が送れるならば、すぐにも会社勤めをやめたかった。だから、退職して一人自由になったときはほんとうにうれしかった。そして、毎日ぐうたら生活をしているが、少しも不満足とは思わない。

 趣味や、仲間や目的を持たなかったらみじめな老後になると、定年後人生を脅かす本が花盛りだが、人生は色々、多方面から見つめるべきと思う。

 それから、勤め人生が終わると、やたら多くなるのが同窓会の誘いだ。この間、びっくりしたのだが、とうとう保育園の同窓会の誘いまでされてしまった。

 こんな同窓会に出席すると故郷の良さを感じる。そして、今の生活を終えて、故郷に帰ろうかと思う。もちろん、妻には反対される。だけど、老年を迎えた夫婦。家にいても会話が無い。妻のご機嫌をとるために、食事や洗濯をする。その惨めな姿が、妻のいやけを増幅する。それで、詰まった結果が故郷は暖かい、離婚してでも帰ろうということになる。

 そんな思いに対して、主人公の娘が言う。
「故郷は遠くにあって、遠くから思うからいいとこなんだよって、お父さんの好きな啄木も言っているでしょ。東京に住んで、たまにやってくるから特別にみてくれるんだよ。だけど戻ってきてしまえば、特別じゃなくて、普通になって、誰も特別な人として扱ってはくれないよ。」

 その通りだと思う。東京にいても故郷に帰っても、寂しい生活が待っている。

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| 古本読書日記 | 06:10 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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