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加藤千恵   「こぼれ落ちて季節は」(講談社文庫)

連作短編集。
結婚すること、結婚しないということと、結婚できないということはどういうことなのだろうか。

 佳奈美は、学校を終えてから、小さな出版社だが、憧れていた編集の仕事につくことができた。しかし編集とは名ばかりで、完全に営業の仕事だった。人間関係も労働環境もひどいものだった。2年我慢して、退職した。

 そして、今は学習塾に就職して事務の仕事をしている。学習塾も仕事は忙しいが、根気と時間を費やせば、ちゃんと終わってゆくもので、理不尽なことや予測外のことは起こらない。

 佳奈美は今は33歳。漠然と思い描いていたイメージではすでに結婚していて子育てが真っ最中のはずだった。

 友達に紹介されて、大地と付き合い始めたのは27歳のとき。大地は23歳だった。

大地はその間5回職場を変え、今も就職活動中。
 大地が口にする職場への不満は、傍で聞いているとひどいものだった。上司の横暴な態度。休みの少なさ。サービス残業の多さ。社内の人間関係の悪さ。どれを聞いても納得できるもので、会社を辞めてもしかたないと思わせる。
 しかし、こうも離職が続くと、会社の問題ではなく、大地に問題があるのでは、と思ってしまう。

それでも佳奈美からみると大地には問題は無い。でも結婚はできない。そして年齢だけがどんどん積み重なってゆく。

 そんな愚痴を、佳奈美は友達で結婚している葵に話す。そして葵に結婚する決意はどうして決めたのかと聞く。甘い愛の香りがするような回答があるかと思ったら、意外な言葉が返ってきた。

 「彼の仕事が転勤があり、その転勤することについて受け入れたからかな。」
結婚は、現状から完全に異なったステージに移行することだ。その移行を受け入れる決意があるかどうかで決まる。

 当然仕事をしょっちゅう変えるような男とは結婚はできない。転勤があれば、自分の仕事をすてても付いてゆく、付いていかなければ別居しても構わないという決意。

 ゆっくり考えればわかることなのだけど、勢いや盛り上がりで結婚を決意する。そして、異なったステージにぶつかり、衝撃を受け、失敗だったのではと考えるようになる。

 短編だけど、胸の奥にあるにこごりが疼いてくるような話である。

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| 古本読書日記 | 05:52 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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