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山本周五郎    「五瓣の椿」(角川文庫)

天保5年1月6日夜、江戸で薬や油を商う「むさし屋」のかみさんが住んでいた家が火事に見舞われ、焼け跡から3人の遺体がみつかる。

 「むさし屋」の主人が労咳を病んでいたため、病気を移されるのを嫌って、妻は別居していた。主人が危篤で死んでしまいそうな状態になり、主人は最後の願いで妻のところに戸板で運ばれた。しかし主人は運ばれている途中で息を引き取る。

 この妻、おしのの母親は、別居をいいことに、男を次々咥えこんでいた。主人は、入り婿で妻に何も言えず、家業に精をだし、懸命に働き「むさし屋」を大きな店にした。

 娘のおしのが年末、医者より父親の容態は重くすぐに亡くなってもおかしくない状態と言われ、大きな喀血をしたため、母親に正月は来るようにお願いし母親も受諾したのだが、約束は反故にされ、母親は男と旅行にでていた。

 息を引き取った主人が運ばれても、母親は男と隣部屋で酒を飲み、遊蕩にふけり、夫の死体をみることが無かった。娘のおしのがなじると、「この人はお前の父親でなく、別の父親がいる」と衝撃的な事実をおしのに言う。
 おしのは亡くなった父親が可哀想でならず、母親の家に火をつけ母親を殺し、さらに母親と遊蕩した男八人を、母親と男を結び付けていた手代の佐吉から聞き出し、そのうちの特に悪辣な5人を殺害する決意をして実行する。

 胸を簪で突き刺し、死体の横には父親が好きだった椿の赤い花弁が一片必ず置かれていた。

 4人を殺害し、最後にあい対したのが源次郎。この源次郎がおしのを抱こうとしたとき、おしのは「あなたは私の産みの親」と言い放つ。源次郎がひるむ。そしておしのは源次郎を殺すのをやめる。

 おしのがきっぱりと宣言する。
「殺せなかった」のではなく「殺さなかった」と。

 おしのは取り調べで、自分が不義の子でありしかもその父源次郎が娘を抱こうとしたことを言う。それが、江戸中に広まり、源次郎はこれから重圧のなか苦しい生活を余儀なくさせるのだ。

 物語は平凡だが、最後の「殺さなかった」というところは強烈な印象を与える。

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| 古本読書日記 | 06:13 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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