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加藤千恵    「さよならの余熱」(集英社文庫)

加藤さんの小説は、確かに他の小説家の作品とは際立った違いがある。それが何なのか上手く表現できなくて、もどかしかったのだが、この短編集の解説で友人でもあり作家でもある西加奈子さんが的を得た表現をしている。

 加藤さんは西さんによく言う。
「私は普通のことしか書けないの。」

その言葉に続いて西さんが書く。

彼女の描くのは、恋の始まりの淡い高揚や、小さくて、でも鋭角な痛み、終わりを知っているのに終わることのできない、ささやかな絶望であったりする。それは我々の、言葉に表すのは困難な、でも、確実に存在する感情なのだ。千恵ちゃんは、ミクロの目で丁寧に掬いだし、きちんと対峙し、真摯に描こうとする。

 本当にその通りだと思う。
そして、この作品集に収められているどの作品も、今このときでも、日本のどこかではきっと起こっているありふれた出来事だと感じさせる。

 中学生の時、美術室でみんなと喋りあう。まだよくわからないから。
「ほんとに好きってどういうことなのかな。」好きって何?付き合うって何?

それから10年を経て、25歳になった主人公はササと同棲生活をしている。自分が一歩ひけば、謝れば、簡単に済むことなのに、どうでもいいようなことに口をとがらして刺すような言葉を発してしまう。とってもササのことは愛しているはずなのに・・・。

 そんなことが重なったある日、書置きがある。
「申し訳ないけど、しばらく留守にします」と。

今まで意識していなかった自分の愚かさと傲慢さが主人公に襲いかかってくる。

そして思う。
「わたしはササに甘え切っていたのだろう。何をしても許される気がしていた。甘え、言葉にしてしまえば、それは簡単なものだったのだ。簡単で、陳腐で、腹立たしいもの、つまらないもの。」
 「ササ、わたしのこと好き?」

そして、中学生のときみんなで語り合った同じ言葉を10年後にまた発する。
 「好きって何?」

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| 古本読書日記 | 06:20 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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