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加藤千恵    「あとは泣くだけ」(集英社文庫)

恋愛を含め人との関係が壊れる。あるいは突然、あの痛い思い出がよみがえるたいせつだった品がでてくる。もうその後は、泣くしかないという7編の短編集。

 加藤さんの紡ぐ物語。誰もが経験するわけではないが、どの物語も自分が体験しても不思議ではないと読者に思わせ共感を引き起こす。読者の心に寄せ合った物語ばかり。

 世の中にはそれなりに存在するのだろうけど、自分には現実感が乏しいのが「被害者たち」という短編。

 主人公の女性がひふみと出会ったのは、20歳の学生のとき。アルバイトで行った会社の初日、封筒の宛名をパソコンに入力していたら、どこからかわからないが、一行ズレて入力してしまっていることに途中で気が付く。絶望的になり茫然としていたとき、近付いてきたのが社員であったひふみ。

 ひふみはそれを瞬く間に直す。感動した主人公はひふみに恋心を抱き、2人は付き合い始め、すぐ同棲する。
 格好よく大人の社会人にひふみは見えたが、つきあうと感情がすぐでて子供っぽいところがあるが、それも可愛いと主人公は感じる。

 ことが起こったのは、主人公が大学の友達と飲みに行ったとき、男性が混ざっているのに女性しかいないと嘘をつきそれがばれたとき。ひふみは主人公を思いっきり殴りたおす。

 それから、何度も殴られ、時には足蹴にされた。最後は首を絞められた。このまま死ぬのかと思った。死んでも仕方ないとも思った。そして主人公はやせ細り、やむなくひふみの部屋をでることになる。

 そして主人公はその2年後、職場の先輩と結婚し落ち着いた生活を送っている。
それでも、主人公にはひふみとの記憶や想いでが途切れることなく心の中にある。

 台所からひふみからもらった賞味期限切れのわたりがにの缶詰めがでてくる。ひふみが心から飛び出してくる。あの頃にもどりたいと思う。

 「期限切れなんだけどひふみがくれた缶詰めがでてきたよ。」
心に住んでいるひふみが答える。
 「そんなのすてりゃあいいじゃん。」
 「でも、折角ひふみがプレゼントしてくれたのよ。」
 「缶詰めなんていつでも手にはいるじゃん。」

殴られたり、足蹴にされたところで、憎悪と恐怖がわきあがり、即別離となるように思うのだが、どれほど暴力を浴びても、あの人といたいというのが上手く飲み込めない。

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| 古本読書日記 | 06:17 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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