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梅崎春生   「怠惰の美徳」(中公文庫)

今の小説家というのは、時代小説を書いても、サスペンスを書いても、恋愛小説を書いても、前向きで颯爽としていて、弁舌もさわやか。そういう生きざまを書かないと、この文学世界から見放される。

 でも、我々世代になると、よくこれで飯が食えるなというくらい、ぐうたらぐうたらしていて、しかも描くのはそのぐうたら生活のみ。どこかに欠陥をかかえながら、仕方なく小説でも書くかという小説家が結構いて、それなりに読者もついていた。

 一昔前のこの作品集の作家梅崎春生はその典型。かの遠藤周作が師匠とあがめ、まねて「ぐうたら狐里庵」シリーズを書いたくらいだから、真のぐうたらを極めた作家である。

 朝8時に起きる。それから朝飯を食べ、そしてまた布団に入り込んで横になる。ぼんやりとものを考えたり、本を読んだり。そして昼一時ごろ布団から這い出て、昼飯を食べる。
そしてあわててまた布団に入り込む。三時ころしぶしぶ布団から這い出て、仕事を六時までする。それから夕刊などを読みながら、飲み物を摂取して夕食を9時ごろまでする。
 そして九時半には布団にはいり就寝となる。

 梅崎春生の友人にある作家がいた。ある日サントニンを飲み、お腹にいた回虫を駆除した。途端に小説が書けなくなった。ということは、小説は作家が書いていたのではなく、回虫が書いていたのだ。

 梅崎も身体の具合があまりよくない。精神的鬱も抱えている。肝臓も肥大している。その他にもいくつも身体に障害がある。
 しかし、この半健康的状態が、梅崎の人生観、世界観を創り上げている。もし、これが健康的になり何の障害もなくなったら、小説は全く書けなくなるだろうと梅崎は言う。

 こういうぐうたらをしているところを、自己肯定的に言い切る様が魅力的だ。

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| 古本読書日記 | 05:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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