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中村文則    「惑いの森」(文春文庫)

ひねりの効いた味わい深い掌編集。どれも面白いが、中でも面白いと思ったのが「老人とネコ」。

 ネコがまたかよという雰囲気で不機嫌な顔をして、老人が皿でだした魚を食べている。老人だって同じ魚を食べる。しかし老人には卵焼きと味噌汁が別についている。
 魚を食べ終わった猫は外へといつものように出てゆく。

 その日も、老人は魚を皿にもって猫にだしてあげる。しかし老人は猫が見えない場所でうなぎを食べる。年金がでた日だから贅沢をしたくなったのだ。

 老人が突然倒れる。友達もいなければ、助けてくれる人もいない。もう死ぬしかないと思ったら、涙が溢れてきた。そこへ猫がやってきて、涙を舐める。そうか、最後に猫がいてくれたかと老人は想う。その気持ちは決して悪くはない。老人は「ありがとう」と猫に言う。

 もうだめと覚悟したとき、猫が飛び跳ね孤独老人用の緊急ボタンを押す。

 老人は病院に搬送され一か月後に退院して自分の部屋に戻る。

老人がいない間、隣の住人から猫は魚よりおいしいキャットフードをもらい暮らす。しかし老人が戻ってからは、また以前のように老人がだす魚を不機嫌な顔をして食べて暮らす。

 老人が猫に聞く。
「あのとき俺の涙を舐めたのは、魚の味が薄かったからか。」と。
この最後のところが、ぐっと効いて読者ににやりとさせる余韻を残す。

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