FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

獅子文六    「海軍随筆」(中公文庫)

この作品、2003年7月に文庫として出版される。今は静かなる獅子文六、源氏鶏太がブームで、彼らの作品が文庫となって再出版されている。獅子文六といえば、西洋文化に造詣が深く、ユーモアにあふれた市井の作品を多く発表し、ある時期ベストセラーを連発した作家だ。

 獅子文六には、戦時中海軍を舞台に書いた小説「海軍」と、国策に従って、海軍の雄姿を描いたルポ「海軍随筆」の軍隊物を書いている。当たり前だが、この2作品獅子文六の特徴であるユーモアは全く影を潜め、本来の獅子は真面目な人だと思わせる作品になっている。

 それにしても、いくら獅子文六が静かなるブームになっているとはいえ、こんな戦争高揚作品を、今出版して誰が読むと中央公論は想像したのだろうか。兵隊になり戦った人の殆どはこの世から去っているし、またまだ生きておられても、本を読むような人はごくわずか。全く奇々怪々の出版である。

 潜水艦六号艇が新湊で遭難する。その数日前外国の某国の潜水艦が遭難する。その艇を引き上げたところ、司令塔の昇降口に死体が折り重なっていた。みんな我さきに逃げようとしたのだ。

 それにたいし六号艇は、遭難した2日後に海底から引き揚げられたのだが、佐久間艇長は司令塔に、長谷川中尉、原山機関中尉は、いずれもその部署に、下士官、水兵に至るまで、舵手は舵席に、水雷手は発射官室にー最後までその職務を守り従容として死んでいった。

 獅子は熱い心情をこめ、書き記す。
軍隊というのは、考えたり、思いめぐらすことを徹底的に排除する。上官の命令は、絶対で従うしかないように人間を改造する。

 某国のほうが人間として当たり前にみえる。こんな人間改造を成しえる軍隊に空恐ろしい恐怖を覚える。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ


| 古本読書日記 | 05:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT