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篠田節子    「インドクリスタル」(下)(角川文庫)

 現在中国の人口は13億8千万人、一方世界2位のインドは12億9千万人。国連の発表によると数年のうちにインドは中国を抜いて世界一の人口を持つ国なるとのこと。

 篠田さんはこの小説を書きあげるのに5年を要したと語っている。
当初は生き神さまに少女のときに奉られたロサと、日本のビジネスマンとの不思議な交流を描くファンタジー作品にするつもりで書きだしたそうだ。

 しかし、インドの村を取材。電気も一部しかなく、水やトイレは当然のように無い。しかも女性は13歳で結婚、14歳で出産するが、恋はしたことが無いという現状。この作品のように、水晶を送り出すときに、品質を確認して、出荷水晶原石を指示して出荷させる。しかし、日本に帰って送ってきた品を確認すると、指示した品と異なった品物になっている。時には、数量が欠けている場合もある。

 問い詰めると、だれも知らんぷり。さらに厳しく追及すると、「採掘現場は劣悪な環境。安賃金でしかも手掘り。病気になったり、けが人も多数発生。一個や二個、抜いたり、品質の落ちる品を送ってもいいじゃないか。」と居直る。こんなビジネス環境に日本ビジネスマンは苦戦の連続。

 そんな姿を目の当たりにして、ファンタジーは無い。もっと本質を極めたリアルな小説にしようと途中で大きく内容を変えた。

 貧富の格差、男尊女卑、地方と中央、権力と服従、資本と搾取といった対立軸、更にカースト制における差別、部族間の対立、不衛生な環境、インフラの未整備など常に問題が噴出する国。

 篠田はエピソードレベルの描写ではなく、深く問題を追及、大きく俯瞰して物語を紡ぐ。その力量には驚嘆に値する。

 中国は、民主主義を否定して、共産党独裁で国を創ってきたので発展のスピードが速かった。しかしインドは民主主義を選択した。矛盾が随所に勃発するが、社会変革のスピードは遅い。しかし、ゆっくりであっても、やがて発展した見事な国なることを祈りたい。

 そんな思いが大きくさせた小説だった。

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| 古本読書日記 | 05:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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