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宮下奈都     「羊と鋼の森」(文春文庫)

2016年本屋大賞受賞、その他にも幾つかの賞を受賞、直木賞候補にもなり、ベストセラーになった作品。素晴らしい作品と周りの人から言われたが、貧乏だからと文庫になるのをひたすら待って、ようやく文春文庫になったので手にとった作品。

 あれだけ、周りから素晴らしいと言われていたから、さぞかし感動的な場面が描かれているのではと読み始めたのだが、北海道の田舎の村と山を越えた街の話で、そんな感動的な場面は無く、地味で静か、少し拍子抜けした。

 それでも、宮下の筆致には感動した。感情にふりまわされることなく、静謐な、誠実な筆致で淡々と物語を紡ぐ。宮下にもともと備わっていた文体が表現されているのならまだしも、この文体を意識して創っていたとしたら、とんでもない力量のある作家であり、空恐ろしく感じた。

 主人公の外村は、山の村からでてきて、ピアノの調律学校に行き、そこを卒業して、山を越えた市にある小さな楽器店で調律師となって働く。その成長物語がこの物語のテーマだ。

 この作品を読む前、中山七里の作品を集中して読んでいた。中山の音楽演奏シーンの描写は、大げさで、これでもか、これでもかと10数ページをかけ畳みかけるように描く。それに比べこの作品では1ページあるかどうかで実にあっさりしている。え?これだけと本当に拍子抜けする。

 それから、何人か外村の師匠になるような調律師が登場するのだが、外村が山育ちで、人見知りがして、孤独で友達もないのか、すべて「~さん」で表現され、「~先輩」とか名前で呼び合うところが無い。だから、登場人物すべての名前がでてこない。このあたりの宮下さんの人間関係を描く部分は繊細だ。当然外村の呼ばれ方も「外村さん」。

 そこはかとなく、せつなく、埋められない距離がある。

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| 古本読書日記 | 05:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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