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中山七里    「さよならドビュッシー前奏曲」(宝島社文庫)

「このミステリーが凄い」で大賞を受賞した「さよならドビュッシー」でいずれも死んでしまう脳梗塞で倒れ片手を残して半身不随となった香月玄太郎とその介護士綴喜みち子が活躍するミステリー短篇集。最後の作品に名ピアニストで名探偵の岬が登場している。

 中山の作品には、犯人が犯罪を実行するように手引きしたり追い込んだりする、或いは自ら手を下さず、被害者が死んでしまうようにする黒幕が存在する事件を扱った作品が多い。

 玄太郎が脳梗塞で倒れ、緊急手術を受ける。その結果、言語障害と片手しか動かない障害が残ってしまう。
 それで、機能回復のためのリハビリをすることになる。玄太郎は言葉を取り戻すリハビリと、プラモデルを組み立てるリハビリをすることになる。時間はかかるが、玄太郎の執着心とやりきる気概から、旧日本軍の戦艦を創り上げる。その、作成過程で言語も取り戻す。

 玄太郎と同じ時間にリハビリをする同年代の患者領家壮平がいた。壮平は殆ど機能しない両足を使って懸命に歩行回復訓練をする。そして、この訓練には必ず息子の壮一夫婦がつきあって、懸命に応援する。その真剣な応援姿勢と頑張る壮平の姿に病院関係者も感動する。

 そして今日は、廊下の端から端までの10mの歩行に挑戦する。壮平は何回も崩れ落ち、そのたびに補助棒をつかもうとするが、壮一夫婦が棒につかまってはいけない、自分の力で立ち直り歩けと声をあげ声援する。崩れるたびに、手でなにかの合図をする。そして、あと1mのところで、壮一夫婦の声が一段と大きくなる。
 「あと少し」
 「あと少し」
 「あと少し」
そのときゴールに張ってあるテープを玄太郎が掴み投げ捨てる。

 玄太郎が言う。
「壮平さんは、壮一夫婦に殺される」と。玄太郎と壮平はモールス信号で互いにコミュニケーションをとっていた。

 壮平は京都で脳梗塞に倒れ、京都の病院で手術と治療を受けていた。その主治医が亡くなり、玄太郎と同じ名古屋の病院に入院、リハビリを受けていた。

 実は壮平には狭心症の持病があったが、壮一の妻は病院事務をしていて、診断書を狭心症なしに書き換えていた。
 狭心症の患者に、きついリハビリを繰り返せば、必ず発作がおき亡くなってしまう。

壮一夫婦は、金融先物取引で失敗、それを弁済するため、壮平の遺産と保険金をあてようとして、殺人計画をたてる。

 リハビリ中に病院で死ぬのなら、自らの手をくださず人殺しができ、犯罪とはならないからである。

 結構、世の中にはこんな犯罪にならないようにみせかけた犯罪がたくさんあるのではと思わず思ってしまう。

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| 古本読書日記 | 06:17 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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