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山崎マキコ   「さよなら、スナフキン」(新潮文庫)

物語の多くは、人々の悩み苦しんでいる姿を描きながら、その度合いには違いはあるが、主人公が回りの人々にも支えられながら成長し、人生の将来にむけて毅然と立ち向かっていくというような物語か逆に、そんなチャンスも与えられず、ひたすらはいずりまわりながら、人生の底に堕ちてゆく2つのスタイルに分けられる。

 この物語は、そのどちらにもはまらない、実にいらいらさせる、不思議な物語だ。主人公の大瀬崎亜紀は、大学は2つめ、3浪と同じ状態、しかも大学は誰もが認める3流大学農学部の学生。

 とにかく自分ほどダメな人間はいなくて、臆病者で、生活感が殆ど無い。どうしてこんなに自分はダメなのだろうと夜はじくじく思い悩み、明け方疲れて眠りにつき夕方起き上がるという自堕落生活を繰り返している。

そんな彼女が、バイト先の編集プロダクション会社のシャチョーに恋をする。シャチョーは、亜紀の生きざまがユニークと思い、小説を書いてもらい出版しようと亜紀に提案する。亜紀は何を書いていいか思いつかない。それで、社長の言う期限が迫り、やけくそになって自分の経験を書く。

 それがあたりベストセラーになる。しかも続編も同じようにベストセラーとなる。しかしシャチョーは、印税は社長のものにして、亜紀はアルバイト代6万円で日夜執筆、仕事に酷使される。これでは、過労死するのではと思いシャチョーの会社を去る。

 こんな作家を出版界が放っておくわけがなく、あちらこちらの出版社から、作品を出版させて欲しいとの依頼が破格の条件である。しかし、亜紀は自分は人生から落ちこぼれたダメ人間であると思い込んでいて、面談にいっても、作品創作の約束はせず、回答は後日ということにして出版社を後にし、その後回答をすることは無い。

 普通の物語なら、ここがチャンス。この機会を何としても掴むんだと意気込んで、人生を切り開いてゆくとなるのだが、こんな機会を亜紀は放棄する。どうしてと読者をいらいらさせる。しかし、このいらいら感は読んでいて決して違和感を覚えない。

 それは山崎さんの、徹底したアホと同化した、飛んでる表現に踊らされている私を含めた読者がいるからだ。

 「ねえ、大瀬崎の学校でどれだけばかなのさ。」
 「もうすっげーばかですよ。ウチのクラスの金島君は、ウェイトリフティング部の選手なんだけどぉー。椅子に高さを調整するねじがあるでしょう、そのねじをひねらずに、ちからまかせに高さを上下させようとするんですよ。で、顔を真っ赤にして、おかしいなあ、どうなっているんだろうと首をひねってるんですよ。」

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| 古本読書日記 | 05:50 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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