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湊かなえ     「物語のおわり」(朝日文庫)

絵美は小さな山あいの町に生まれた。家は「ベーカリー ラベンダー」というパン屋をしている。山の向こうには何があるだろうと空想しながら、小説を読んだり書いたりすることが大好きな子だった。

 同級生で転校してきた道代も小説が好きで、道代は町をでて、大流行作家の松本流星の内弟子となる。
「ラベンダー」には、毎日パンを買いに来る高校生の公一郎がいた。公一郎は絵美に恋して、高校をでるときに絵美に結婚しようとプロポーズをしてそのまま北海道大学に入学する。

 2人は遠距離恋愛を育み、公一郎は北海道大学を卒業して、絵美と結婚してパン作り職人となる。

 一方道代は松本流星の家で作家をめざしてがんばるが、編集者と恋愛に陥り、流星の怒りをかい追い出される。流星は絵美の書いた作品を読み、才能があると認めて東京にでてくるよう勧める。

 絵美は、そんななか、生涯をパン屋で過ごすことが辛くなり、東京に行きたいと夫公一郎に訴える。
 しかし公一郎は松本流星が女性狂いであることを評判で知っていて絵美を引き留める。それでも絵美はやっぱり作家を夢見て、ある日家を飛び出して駅に向かう。その駅には公一郎が待ち伏せしていた。

 これが、実は絵美の書いた物語。物語は結末が無く突然終わっていた。物語のタイトルは「空の行方」。

 この「空の行方」が偶然人の手に渡る。
そして、その原稿が、人生に悩んだり、行き詰まっていて、それをのがれるために一人旅で北海道にきている人たちに手渡される。

 妊娠三ヶ月で癌が発覚した智子、父親の死を機にプロカメラマンになる夢をあきらめようとする拓真、志望した会社に内定が決まったが自信の持てない綾子、娘のアメリカ行きを反対する水木、仕事一筋に証券会社で働いてきたあかね・・・・。
 人生の岐路に立たされている人たちは、突然終わった物語の続きを懸命に考える。そして、考えた結末はそれぞれだが、考えた結末を土台にして将来に向かってあゆみだそうとする。

 そして最後の物語が絵美によって孫の萌に語られる。登校拒否になっている萌は今絵美おばあさんと北海道を旅している。

 あの時、駅で待ち伏せしていた夫公一郎。絵美をパン屋に連れ戻したのか。そうでは無かった。流星のところに行くのは危ない。大学時代友達だった男が出版社の編集者をしていた。彼に言づてしてあるからそこに行きなさいと住所と電話番号が書かれた紙を渡される。

 しかし、その日、2人はパン屋にもどった。それから何年かして作品を持って2人はその編集者のもとを訪ねた。そして作品は本になり出版された。しかし全く売れなかった。それが絵美の最初で最後の本になった。

 「作家の能力よりパン作りの能力のほうがあったんだ」と絵美はしんみり語る。
 素晴らしい物語の作り手だと湊に対し感じた作品だった。

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| 古本読書日記 | 06:12 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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