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西村賢太   「夢魔去りぬ」(講談社文庫)

今回もおなじみの貫多と秋恵シリーズ5編が中心の短編集。

いつも必ずある、常識を超えた突出した出来事はこの作品集では登場せず、いつもの難癖に近い自己中心の秋恵へのバイオレンスを中心とした虐待と、その後のこのままだと秋恵を失うという恐怖感からくる、秋恵への大げさな謝り、へりくだりという定まったパターンが語られる。

 ひどいのは、大正期の作家の作品集を出版するということで、秋恵の実家から300万円借りる。秋恵の実家が心配になり借用書を作ってくれるように秋恵を通じて貫多に頼むのだが、貫多のプライドが許さず絶対借用書など作らない。

 秋恵はパートで働いているのだが、貫多は日がな一日ブラブラ。全く無収入。それで生活費は借りた300万円から出費する。この作品では、土なべを買う場面がでるが、それがホットプレートに変わる。お金のでどころは秋恵の実家にもかかわらず、貫多がお金を出してあげている状態になっている。この倒錯した威張りの部分にはあきれてしまう。

 西村は父親が強盗強姦事件を起こし、刑務所生活を送る。当然、母親は離婚して母子家庭で育つ。そんな家庭環境のため、高校へは進学せず、中卒で社会に放り出される。普通こんな環境の人は、どうやっても社会から疎外され、一般生活環境は享受できず、生涯底辺で生活するしかない状態になる。

 だから西村は稀有な人だと言っていいし、底辺の本音が迸っている。西村の作品は、成功している流行作家には、気分が悪く唾棄するように思えるだろう。

 しかし、そんな作家の作品より、西村の作品は真実を語っていて、他の作家の作品が嘘っぽく見え色あせてしまう。

 大げさで懐古調の独特の文体が、のめりこむように私と取り込む。

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| 古本読書日記 | 06:09 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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