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村上龍    「オールド・テロリスト」(文春文庫)

  東日本大震災から7年後にあたるちょうど今年2018年の物語。NHKのロビーで、池上の商店街の路上で、そして新宿の映画館でテロが起き、たくさんの死傷者がでる。これらのテロの現場に、失職中で妻子にも逃げられ、ホームレスのような生活をしていたフリージャーナリストのセキグチが居合わせる。

 現在の反権力は、大きな塊となって示威行動をしたり、闘争をすることはない。小さなアメーバ状の組織がたくさん生まれ緩やかに競合しながら、権力に立ち向かう。

 起きたテロの犯行者は、それぞれ20代の若者で、組織的関係はない。
そして、このアメーバ状の若者組織を操りコントロールしているのが、70歳から90歳の老人集団。彼らは、みんな旧満州国と関連がある。

 彼らは、現在の社会構造の在り方に大きな怒りを持っている。わずかな富める者と大多数の低所得者。こんな社会が続いてはならない。

 日本は、戦争ですべてが破壊尽されたが、そこから社会変革が起き、見事に立ち直り成長した。
 だから、現状の社会構造を変革するのには、もういちど日本を破壊尽して、そこから国を再建するしかない。そして、その破壊の武器として原発をおく。

 マスコミは、自分の考えに合うように事実を創り上げ、あるがままの姿を伝えない。それで、あるがままを伝えてもらうためにセキグチが選ばれた。

 色んな不気味でわけありな老人が登場するが、特に想像を超えるような仕掛けがあるわけでもなく、筋立ては単純。

 村上はいつも思うのだが、喋りすぎ。思ったことは、全部表現しないとならないと考えている。644ページもある大長編。しかし、起きる事件はそれほど多くない。テロに遭遇し、恐怖に襲われるセキグチの心象を、こうだろう、ああだろうとあらゆる角度から描く。テロに襲われて恐怖に慄いているのに、あれやこれやと考える人がいるわけない。こんな調子だから、1日半の出来事が100ページ以上にも及ぶ。

 多くのエンターテイメント作家はこれと同じ内容を書かせたら300ページと少しで収まると思う。

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 芥川賞作家となると、心の動きを重点に描くことが求められているということなのか。

| 古本読書日記 | 06:13 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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