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中山七里     「嗤う淑女」(実業之日本社文庫)

今、銀行は低金利政策で利益が取れず、冬の時代に突入している。だから、窓口業務などの事務を大がかりにAI化させ、3割以上人員を削減するということを雑誌、新聞で知る。

 銀行での不正、それは、行員はすべて善人、或いは、そんなことをしても、必ず暴かれ、、その後の人生を完全に失うという想いを基盤にして、発生しない状態になっている。

 しかしAIというのは、不正が行われた時、チェック機能が働き、防止ができるだろうかと思う。
 この作品の、女性銀行員が不正をして定期預金口座を作り、5000万円を詐取する部分は緊張感が走り手に汗がしみてくる。

 名義人伊藤優子。解約金は5000万円。昨日のうちに造っておいた預金証書だった。用紙はもちろん帝都銀行備えつけのものだが、記載された内容はすべて偽造だ。後はこれに支店長の職印さえ捺しておけば、マニュアル通り解約されたことになる。
紗代の左手の下には支店長決裁済みの別書類がある。それを確認してから制服のポケットにしのばせておいた五センチ四方の紙片を取り出した。半透明の薄紙。その正体はトレーシングペーパーだった。
紗代は首を動かさず周囲の気配を探る。
大丈夫だ。自分に注目している者は誰もいない。
職印の上にトレーシングペーパーを置き、指の腹で何度も擦りつける。頃合いを見計らって、トレーシングペーパーを剥がし、今度は偽造した預金証書の上に載せる。
そしてまた指の腹で擦りつける。隅から隅まで着実に、ゆっくりと。
こうしている間も紗代は周囲への警戒を怠らない。自分の机の上をのぞき込む者を察知したら、すぐに作業を中断しなければならない。集中力と警戒心で紗代の神経は針のように尖る。
周囲の音が遮断する。

息が詰まる。
AIはこんな不正を察知することができるのだろうか。
 紗代はこんな手で、伊藤優子名義の架空口座に2億円まで金を積み上げる。

 そしてある日ATMで20万円を引き出そうとするが、残高不足で引きおろしができない。残高は3,451円。2億円は、紗代を唆していた詐欺集団からすでに引き出されていた。

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