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坂木司     「短劇」(光文社文庫)

坂木が紡ぐ「世にも不思議な物語」掌編集。

昔からつまらない男だと言われてきた。酒も煙草も嗜まず、賭け事など、手をだしたこともない。見合いで出会った妻以外女性を知らない。高級な物や食事には興味は無いし金のかかるような趣味もない。

 周囲から、真面目、四角四面、堅物と言われた。それでもちっとも苦にならない。間違った人生を歩んでいるわけではないから。

 ただ地図をながめて、最短ルートで目的地までいける道筋を考えることが唯一の趣味と言えるかもしれない。迷い道を通らない人生なんてつまらないと人は言う。

 あるとき同僚に言われる。
「人に道をたずねることができる奴というのは、根本的に人を信じてるんだよ。」と。
「嘘をつかれたり、騙されたりする可能性を思わないのだろうか。」
「そこまで考えないから受け入れられるのだろう。心から信頼されている相手に対し、人はそうそう冷たくはなれないものだ。」

 子供からも言われる。
(だからお父さんは誰からも好かれないんだ)と。

それで、決心する。道に迷って、人に訪ねなければ自分は変わらないと。

ある人と会う約束をしたある日、迷うために、わざと2駅乗り過ごして降り、そこから歩いて約束の場所まで行くことにする。
駅に降りると、全く見知らぬ風景。あれやこれやと考えながら歩くが、全く方向がわからず、迷ってしまう。それでも、ふらふらと彷徨を続ける。最後にはどこにゆくべきかも朧気になる。

そして何時間の後、街の同報無線が流れる。
「本日朝10時より外出した○○さん65歳が、外出したまま帰宅していません。お心あたりのかたは、最寄りの警察、または交番までお知らせください。」と。

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| 古本読書日記 | 05:45 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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