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歌野晶午   「安達ケ原の鬼密室」(祥伝社文庫)

変わった構成の小説だ。全部で4つの小説が書かれている。

冒頭は小学一年生が主人公で、全部ひらがなで書かれている童話風の物語が登場する。この物語が中途半端に終わり、突然、フセ・ナオミという女子高生がアメリカ テキサスの小さな町に留学していて、その高校で殺人事件が起きる。これも中途半端で終わる。

 そして、真打である「安達ケ原の鬼密室」が始まる。この「安達ケ原の鬼密室」の中に本編とは関わりの無い推理小説が独立して差し挟まる。この「安達ケ原の鬼密室」が完結すると、突然フセ・ナオミ主人公の小説の後半が始まり、その小説が終わると、冒頭の童話風の小説の後半が始まる。

 「安達ケ原の鬼密室」本編がサンドウィッチになった構成になっている。しかも、4つの小説はそれぞれに独立していて、繋がっているものはない。

 もちろん中心になる小説は、「安達ケ原の鬼密室」。

太平洋戦争末期、疎開先から脱走した主人公の梶原兵吾少年は、小さな岬にある口型に建っている屋敷にたどりつく。ここで撃墜されパラシュートで脱出し、同じ屋敷にたどり着いた米兵や、その米兵を探求しにきた日本兵4人、更に、この屋敷に住んでいた手伝いの婆さん、それに兵吾少年が遭遇した鬼を含め、兵吾少年以外の7人が死亡する事件がおきる。

 それから60年後、兵吾少年の妹となのる女性から、八神探偵事務所に真相を明らかにして欲しいとの依頼がある。

 この物語の中に突然全く異なる独立した物語が挟まれる。東京の消費者金融の社長とその愛人が、マンションの庭で死体となって発見される。しかも社長は真っ裸。

 このトリックがすごい。酒に酔って風呂に入っていた社長を、風呂場をテープやゴムを使い完全密閉する。そこに湯を張り続け、それに社長が溺死する。溺死後、排水溝に仕掛けをして徐々に水を引かせ、確かに死んだか、水が引いた時間に確認に行く。

 これがうまくいくはずだったが、排水管の曲がっている部分に排水時間を調整するために使った石鹸と錘がとりつき水が引かなくなる。

 これが計算外となり犯人が確認に行ったときには全く水がひいていない。風呂場に正面からはいれないで、ベランダからはいる。そのとき溢れかえった水が、社長の遺体とともに強烈な勢いで外へほとばしる。この勢いに犯人、社長ともベランダからふきとばされ、庭に放り出される。

 この事件が、4つの事件の真相の鍵になる。

「安達ケ原の鬼密室」では、海の満干が鍵。フセ・ナオミではハリケーンの洪水、小学一年生の童話では井戸に満たした水がトリックとなる。

 4つの話は、水が共通のトリックになっているのである。

現実にはありえないトリックなのだが、そこが、乱歩の作品を読んでいるような雰囲気となる。

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| 古本読書日記 | 05:53 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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