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坂東眞砂子   「道祖士家の猿嫁」(講談社文庫)

私の祖母は40年前に亡くなった。明治に生まれ、隣村から嫁いできた。この物語のように、百姓の我が家で、下女のように毎日働かされ、夢も希望もなく生涯を終えたのではと思う。

 この物語の主人公蕗、狭の国という高知県の山奥の村から、火振り村という落ち武者が住み付いたこれも辺鄙な狭の国の山を隔てた隣村の名士道祖士家に嫁いできた。風貌が猿に似ていたため、猿嫁と呼ばれ、夫のみならず道祖士家からは蔑まれた。

 その蕗の生涯を描いた、明治、大正、昭和の時代にわたった大河小説がこの作品である。
坂東さんは、時々に起こる事柄や、事象を、時代状況を摑んで、実にリアルに書き込んでいる。読者は、その時代にまさにいるのではという錯覚に陥る。

 蕗の80歳になったときの述懐。

 「道祖士家の嫁に入って以来、舅姑や義姉妹弟、夫や子供のためにひたすら家の中で働き続けてきた。隠居の身になっても、夫の清重は中風となり、下の世話までしなくてはならなかったし、夫が死んだと思うと、次には老齢で動きの緩慢になった義姉が、蔦の世話が待っていた。すべてのしがらみから解放されたのは、蔦の死んだ七年前だ。八十歳を越えて、ようやく蕗は自分のためだけの時を持つことができるようになったのだ。」

 この慨嘆そのままに物語は描いているのだが、本当に蕗がこのように思っているのかは何となく疑問を感じる。
 物語は、現在の社会環境で、蕗の生き方を見つめるから、いかにも不幸せな生涯を蕗が送ったように描く。

 私のお婆さんも、蕗と同じ時代を生き、同じような生涯を送った。しかし、自分が不幸せだと嘆いたことは無かった。誰もがおなじような時代を送っていた。

 私の生まれたころ、家は茅葺きという家が多かった。一般の家の屋根はトタンか、ブリキ、板、それがふきとばされないように石を重しにおいていた。今はスレート屋根が一般的になり、瓦葺の屋根は少なくなった。瓦葺屋根というのは、戦後創られた家で採用され、当時は瓦葺がモダンと言われていたそうだ。瓦葺はそれほど古い屋根ではなかったことをこの作品で知った。

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| 古本読書日記 | 06:11 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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