FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

開高健    「巷の美食家」(ハルキ文庫)

 開高、題名は忘れたらしいが、水をテーマにした素晴らしい掌編をこのエッセイで紹介している。

 ある夕方、一人の若者が放浪の旅に疲れて、故郷の小さな町に帰ってくる。そしてある家の庭のよこを通りがかる。一人の老人が芝にホースで水をかけている。若者が垣にもたれて水滴のほとばしるさまをみつめていると、老人がやってきて、ホースの口をさしむけて、一杯いかがと言って若者に水を飲ましてやる。

 若者が飲み終わって手で口を拭いていると、老人が
「何といっても故郷の水が一番だよ。」
と言ってたちさる。

 これだけの物語。水の命が伝わってくる。

水といえば何といってもアルコール。それも日本酒。

 開高が厳冬期に訪れた灘の酒蔵。近代化と称して、一階、二階をぶちぬいて大きなスチームにお米を入れて蒸し上げる。それが蒸しあがると、蒸気モウモウの中へ、草鞋をはいた丹波の若い杜氏が木の鋤を片手にワっととびこんで、蒸しあがったご飯を仲間の背負子に放り込む。その若者の露見した二の腕がピリピリと震える。たちまち全裸の身体は真紅に燃え上がる。汗がほとばしる。その流れる汗は、お米に潤味を与える気配である。

 感動しながら見つめていると、六尺ふんどしが湯気で緩み、赤いものがゆらゆらしているのが見える。そこからも汗が流れお米にしみわたってゆく。

 開高は感動してつぶやく。
 「そういえば、どこかに金露というお酒があったけ」と。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 05:48 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT