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西村賢太    「無銭横町」(文春文庫)

平成きっての無頼派、私小説家の西村、油ののりきった短編6編。

西村を表している主人公北村貫多。20歳のころ椎名町の4畳半の安アパートに暮らしている。港湾荷役などの日雇いで糊口を凌いでいるのだが、あまり荷役仕事にも行かない。それで懐はピーピー。

 とうとうある日一円も無くなる。夕飯を食べねばならない。色々考えて先週買ったばかりの黒岩涙香などの作品が収録されている「日本探偵小説集」の文庫本、まだ読み終えていなかったがこれを古本屋に持っていって金に換えることにする。高い文庫本だから二百円はまちがいない。二百円あれば駅の立ち食いそばが食べられる。

 ところが古本屋にもっていくと100円でしか買い取れないという。何とかと懸命に懇願しても店主「それなら持ちかえれ」といって譲らない。

 100円をポケットに入れアパートに帰る。その途中でコンビニによりインスタントの塩ラーメンを55円で購入。レジのおばちゃんに頼んで割りばしとビニール袋2枚をわけてもらう。

 しかし、貫多のアパート。共同水道はあるが、ガスがきていない。
ビニール袋を二重にしてラーメンと粉スープと水道水をいれ、ビニールの口をとめて、ビニール袋をやわやわと揉む。こうすれば、麺がやわらかくなりスープと溶け合うはず。

 しかしいくらもんでも、イメージのようにはならない。放っておけばイメージのようになるかもしれないが腹が減って待てない。それで、口留を解いて割りばしで拾ってたべる。ポリポリと音がする。心底まずいと思う。

 恐ろしく毒とユーモアが混ざった切ない小説である。完全に突き抜けている。


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| 古本読書日記 | 06:03 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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