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貫井徳郎    「空白の叫び」(下)(文春文庫)

14歳の中学生3人が人殺しをする。力がすべての久藤は、その力を奪われてしまうのではないかと思い、柏木という女教師をレイプ後殺害。医師の息子で成績も優秀な大金持ちの息子葛城は使用人夫婦の息子英之を苦労して完成したプラモデルを壊され、それに怒り殺す。神原は母親が男に狂い育児をほったらかしにされ、母親の妹の叔母さんと祖母によって育てられる。祖母が死にその遺産をめぐり母と叔母が相続争いとなる。母親は誰かにそそのかされ叔母を苦しめる。これに怒り母親を焼き殺す。

 この3人が少年院に収監され、やがて出院して、それぞれの道を歩みだすが、社会から疎外され、社会と闘おうと少年院仲間2人を加え5人で銀行強盗を働き成功する。

 物語では、少年の悪はどのように作られ実行されていくのかを丹念に描く。

しかし、私は別の面で作品の凄さ、貫井のミステリー作家としての矜持を知り、感心した。

 実は、神原の養育費は、父親が秘書に持たせて毎月叔母に届けている。ここにもう一人瀬田という悪が登場する。瀬田は自分の父親は葛城の父だと思っているが、瀬田には養育費が払われていない。ということは神原と葛城は異母兄弟だったのかと読者は理解する。同時に瀬田については葛城の父は、自らの子ではないと思っていて、神原は自分の子供だと認識しているのだとわかったような気になる。

 ところが貫井はそんな単純な関係を用意していなかった。

 葛城の父の妻が葛城を産んだとき、実は父親には愛人があり、その愛人に子供を孕ませていた。それに、祖父は激怒した。しかし葛城の父が真剣に愛人を愛していたことを祖父に訴えたので、この愛人をどうするかということになり、使用人宗像に妻として押し付けようとした。しかし、そのとき宗像には妻子がいた。

 宗像の妻は、多大な手切れ金と、月々の生活費と養育費を葛城の父に要求。それを条件に宗像のところを子供を連れて去る。そして葛城の父の愛人を宗像は再婚妻として受け入れる。

 何と愛人に孕ませた子は宗像に押し付けた愛人の子である英之。神原は、宗像の子だった。
葛城は、使用人宗像の子を殺害したと思っていたのだが、実は父親の子であり、葛城は異母兄弟である弟を殺害していたのである。

 とんでもない父親を巡る相関図を貫井は用意していた。読者に対して、どうだ君たちにはわからなかっただろうとほくそえむ貫井が私には見える。

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| 古本読書日記 | 07:03 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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