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歌野晶午   「ずっとあなたが好きでした」(文春文庫)

ミステリーの味わいが香る、佳品が並ぶ恋愛小説集。
どの作品も面白いし、驚くことに13作品全体での仕掛けもあり、歌野はなかなかやるなと感心する。

 辰雄、年齢は定かではないが、80歳半ばは超えているだろう。糖尿病が悪化して丸山病院に入院している。糖尿だけでなく、認知症も進行している。

美由紀は、辰雄の長男を夫にしていたが死別、本来なら辰雄は次男が面倒をみるべきだろうが、次男は世話をせず、義理の娘になる美由紀が面倒をみる。

主人公の私は、たまたま小学校の同級生の美由紀と街で出会い、美由紀の境遇を聞き同情して、美由紀とともに週一回会社をぬけでて辰雄を見舞っている。

辰雄は美由紀を死んだ彼の妻昌子と思っているし、主人公のことは美由紀の夫で長男の治だと思っている。

 近くで中年の女性がやっている花屋で見舞いの花を買って行って枕元の一輪挿しにさしてあげる。最初はプリムラ、次にシンビジウム、そして薔薇。この花のすべてが一日たつと辰雄のベッドから消えてなくなる。

 看護婦に聞くと、大量の花は、アレルギーのある人がいて禁止されているが、一輪、二輪なら全く問題ないと言う。
 美由紀と私は病院の関係者か、他の患者が故意に捨てているのではないかと疑う。しかし、そんなことは言えないからじっと堪えている。

 すると、何日かたつと、辰雄の腕に切り傷ができている。最近は病院や施設で、看護師や介護士が、患者や入所者を傷つける事件が多発している。さすがにこれはと心配になる。
 直接には聞けないので、遠回しに聞くが真相はわからない。

 そして、ある日辰雄が行方不明になる。どこを探してもいない。美由紀と主人公が困っていると、ある看護師が「辰雄さんいましたよ。」と教えてくれる。

 301号室の個室に入院している安治川さんというお婆さんの部屋にいたのだ。あわてて美由紀と主人公が301号室に行くが、辰雄の姿は見えない。どうなっているのかと思い布団をはがすと、安治川さんの胸に顔をうずめてまるまっている辰雄がいる。安治川さんも意識しているかどうかはわからないが、細い腕で辰雄を抱きかかえるようにしている。

 そして安治川さんの枕元には辰雄に買ってきてあげた花がある。

 無くなっていた花は、辰雄が安治川さんに捧げていたのだ。腕の傷は持ち運んでいるときに薔薇の棘が刺した傷だった。

 これだけでも、いい恋愛小説だと思うのだが、更にこの話には、印象深いフィナーレが用意されている。

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| 古本読書日記 | 21:56 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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