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坂東眞砂子     「狂」(幻冬舎文庫)

1844年土佐藩領内の阿波の国境の村、豊永郡岩原村で起こった狗神憑依事件の顛末を史実を辿りながら創られた物語。

 この憑依事件。岩原村で毎日四の刻になると、百姓の一部の人たち、それまでは普通に農作業をしているのだが、突然狂ったように身体を反り返し、大声でわけのわからない叫び声をあげ歌をうたい狂う。そして夕刻になると、また元の状態に戻り、疲れきって家に帰り、死んだように眠る。

 土佐藩では、最初2人の下っ端役人を派遣して状況を把握しようとする。その役人の報告は、憑依は収まるどころか、毎日、とりつかれた人間は増えていく。このままでは村は破滅するという報告。そこで、藩のなかでも屈指の5人の祈祷師による大祈祷会が行われるが、全く収まらない。このとき、最も力のある祈祷師が、狗神ではなく狸にとりつかれているというご宣託がをする。

 そこで土佐藩は、足軽40人を編成、鉄砲を持たせるとともに狸が弱いとされる犬を引き連れ、岩原村に乗り込む。狂い踊る百姓たちを前に、空にむけ発砲し脅したり、犬を放ち百姓たちを襲わせる。これにより、とりついた狸は逃げ、落ち着くと思われたが、状態は全く変わらない。

 時は江戸末期。幕藩体制は大きく揺らぎだし、諸外国からの圧力が日に日に増し、世相は騒がしくなってくる。

 この物語では、武士からみた百姓は、違う動物と思われている。ところが、岩原村に派遣された武士は、百姓が自分たちと同じように考えたり、意見を言うことを知り、同じ人間であることに驚く。そして、百姓の女と逢引までするようになる。武士と百姓が垣根を超える。

 憑依は当時の既成概念では狂ったとんでもない事件と思われたが、そうではなくて、虐げられていた人たちの自由や、解放への叫びだった。

 既成概念を打ち破り、それが当たり前になる、最初のきっかけは狂ったと思われる事件から始まる。

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| 古本読書日記 | 22:02 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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