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藤岡陽子   「ホイッスル」(光文社文庫)

  周りからみれば、それぞれの家庭の相違はわからないし、みんな同じように幸せにみえる。聡子の家庭は、聡子と夫章、長年連れ合い信頼しあう家庭を築き、娘香織を嫁にだし、幸せな老後を迎えている。この作品の悪役となる和恵だって、2人の男の子を持ち、夫も普通に働いているし、和恵は総合病院で有能な看護婦として評価を得て、社会の前線で頑張っている。どちらの家庭も良い家庭にみえる。

 何が違うか。聡子の家庭は確かに幸せだった。しかし和恵の家、和恵の夫は、マンションのローンは負担するが、残りの給料は一切家庭にいれず女との遊び、ギャンブルにつぎ込む。生活費、子どもの養育費は一切和恵が払う。しかも2人の子供はグレかかっている。そして何より、有能であっても勤めている病院に支えあう友達や同僚がひとりもいない。孤独な暮らしをしている。唯一仲間といえるのが詐欺をそそのかすレミという少しあばずれな女。

 大腸がんで入院手術した聡子の夫章が、和恵が仕掛けた詐欺の網にひっかかった。和恵が、章を取り込み、章は30歳近い年下の和恵に完全に篭絡される。そして、家も含め全財産を和恵に与え、老後を和恵と愛し合いながら生活しようとする。

 失踪していなくなった夫章と一緒に暮らしてきた家が、章が勝手に売り払い、聡子は我が家から放り出される。そこからの聡子の生きる姿が素晴らしい。

 小さなアパート暮らしになってしまった聡子は、姪っ子の紹介で清掃会社の作業者となる。家庭しかしらない聡子が、突然社会に放り出され、懸命に事務所やスーパーのトイレや窓を清掃する姿が胸に堪える。このとき聡子は66歳である。

 更に、和恵を相手どり訴訟をおこす、きりっとした聡子もよい。和恵を責めたり、説得するのではなく、聡子と夫章との歩んできた道を思い出し語る姿が凛として素晴らしい。

 そのきっぱりとした姿はほれぼれする。
訴訟は、聡子が勝つ。
 しかし、和恵には負けた悔しさだけが残り、聡子の凛とした姿からは何も影響は受けない。また和恵の詐欺人生が始まる。

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| 古本読書日記 | 06:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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