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藤岡陽子    「トライアウト」(光文社文庫)

新聞記者をしていた主人公の可南子。スキャンダルに見舞われ9年間の内勤のあと、突然辞令がでてスポーツ担当記者として前線にでることになる。

 この作品のタイトル、トライアウトというのはプロ野球の球団からクビを宣告された選手が、再度球団に雇ってもらおうと受ける入団テストのことを言う。この入団テストにかって、甲子園の優勝投手でプロに入ってからもそれなりの成績を収めた深澤投手がいた。

 この物語は、深澤投手、主人公の可南子、それに加えて可南子の一人息子孝太の人生再生物語である。

 深澤はトライアウトでどこからも声がかからなかった。それでも野球をやめることができない。黙々と練習しながら、野球への道を進もうとする。しかし、閉塞感に揺れる。

 可南子は取材中の片岡選手に寄り添うように歩いていたことを週刊誌に撮られる。しかも、その片岡が八百長で、撮られた翌日に警察に捕まる。更に、可南子は身ごもっていることがわかり、片岡の子ではないかとマスコミに思われ大スキャンダルになる。それで第一線の記者の地位を奪われ内勤となる。普通は新聞社を辞めるところなのだが、辞令を受け入れ働き続ける。

 そんな中、孝太が生まれる。可南子はその孝太を宮城県の地方都市の実家に預け東京で仕事を続ける。孝太は生まれた時の体重が4kg以上ある、大きな子。小学2年生であっても、3年生を含めても一番身体が大きい。2年生から地元の野球チームに入団している。いつも、元気に練習、試合と明け暮れて野球が好きで楽しくてしょうがないと思われる毎日。

 可南子が実家に帰ったある日、練習試合があって、孝太が絶対勝つと張り切ってでていったので、孝太の野球姿を初めて可南子は見に行く。試合になって、選手をみるとあれほど張り切ってでていったのに孝太がいない。

 見学に来ていた父兄のひとに聞くと、何と孝太はグローブを持ってライトフェンスにへばりついている。ボールがフェンスを越えたとき、外へ出て球を拾ってくる、ときに民家に球がはいったら謝る係をやっていると父兄から教わる。
 監督から徹底的に嫌われ、無視されているのだ。それでも野球を続ける。それは深澤が孝太に言った言葉が支えになっているから。

 「辛い時はその場でぐっと踏ん張るんだ。そうしたら必ずチャンスは来る。チャンスが来ない人は辛い時に逃げる人なんだ。」

 著者藤岡さんは、久しぶりにであった表現力と自分の言葉を持った作家だ。たくさんのページで思わずぐっと迫ってくる言葉に出会った。素晴らしい作家になると感じた。

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| 古本読書日記 | 06:14 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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