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国境の南、太陽の西

アルフィーの曲に「運命の轍 宿命の扉」というものがあり、歌いだしが「国境の南へ太陽の西へ」です。
夢のかけらを摑むとか、鏡に向かって叫ぶとか、彷徨う仔羊だとか、アツい感じの歌詞。
村上春樹の本でそんなタイトルがあったと、ずっと引っかかっていたのですが、ようやく最近読みました。

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そんなにアクが強くなく、現実から浮きすぎておらず、長編にしては読みやすかったです。
初期の作品で、村上節みたいなものが薄いのかと思ったら、「ノルウェイの森」や「羊をめぐる冒険」よりは後で、そんなに初期ってわけではない……かな。
なんとなく、白石一文の作品にいそうな主人公でした。
「彼女こそ運命の女性」と思う人と再会し、妻子を捨てる決心までしてしまう男。
そう言ってしまえばそれまでですが、情熱的というより理屈っぽい感じが。

「誰ともうまくやれないからこそ、きみとだけはうまくやっていける気がする。
結局、僕は君としか一緒にいたくない。
君だってとっくの昔に気付いている。僕と同じように、初めて会ったその瞬間に気付いていたはずだ」
「どんなことだってそうだけど、家族ってのも、僕に言わせれば『さほど』ってやつだね。
自分から楽しもうとしない限りどんどん醒めていくんだ。
妻も子供も自分の人生を賭けるほどじゃないっていう、そのごくごく当たり前の真実を知るのが、とにかくみんな怖い」
これが、白石一文の「翼」。

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「僕は、ある種の人々が大雨や地震や大停電をひそかに愛好するように、異性が僕に対して発するそのような強くひそやかな何かを好むのだ。
百人のうち一人か二人だけを極めて激しく引き付ける匂いも世の中には存在する。
それは特別な匂いなのだ。それが自分のための宿命的な匂いであるということが僕にはわかった」
「他人の目から見れば、あるいはそれは申し分のない人生に見えたかもしれない。
僕は彼女たち(妻と娘2人)には本当に何ひとつ不満がなかったのだ。家庭生活にだって何の不満もなかった」
(すべてを捨てて女性と行くのではなく)「この月の表面のようながらんとした、生命のない世界に踏みとどまったのだ」
これが本書。

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ちなみに、結末は全然違います。
「翼」くらい徹底的な悲劇だとさっぱりしますが、ドラマチック過ぎるかもしれない。
本書のように謎を残して終わるのもいいですね。

| 日記 | 00:25 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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