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坂東眞砂子   「鬼に喰われた女」(集英社文庫)

平安時代の怪奇、女性のエロスを「今昔物語」から題材をとり、10篇からなる短編集。

少し前に京都の伏見稲荷に観光で訪れた。山のようにある赤い鳥居を潜り抜けた。
今もそうかもしれないが、二月の初午の日となると、京の老若男女、貴賤の者から高貴のお方まで誘い合って伏見稲荷を参詣する習わしになっている。

 平安時代のある初午の日、近衛府に使える舎利人、尾張兼時、秦武員、茨田重方の3人が稲荷詣にきている。この中の重方は、全く信仰心はなく、参拝しながら舌をだしている男。そして、これはと思える女性にあったら、見境や恥ずかしさもなく声をかけ口説こうとする。

 その日も参詣途中、顔は笠の虫垂れに隠れて見えないが、その姿恰好から、えもいわれぬ色気と美しさが放たれていた女がいた。重方は、そこに魂を抜かれたように立ち尽くす。兼時、武員はまたはじまったとして先を行く。

 重方は女に惹きつかれるように近付く。すると、女が言う。

 「奥様をお持ちのようなお方が、行きずりの出来心でおっしゃることなぞ、誰が本気で耳を傾けるものでしょうか。」

 今でもこんな場面は世間では普通にあり、それに対し重方の物言いも常套句のようになっている。
 「ああ我が君。おっしゃる通り、とるに足らない女はおりますが、その顔ときたら猿のようで、心は物売りのようにさもしいやつでございます。女の家を出たいのはやまやまですが、後の心の綻びをつくろってくれるかたもございませんので、どなたかこころが魅かれるかたがあらわれるまで待っていたのでございます。」

 そこで、稲荷大明神に聞いてもらっても構わないが、やっと願いが届いて今を迎えた。と懸命に訴えて、住所を交換しようとする。しかし、女は連れなく、男をそでにする。

 それで、今度は稲荷大明神に自分の声を女に届けてほしいと切願する。そして、重方は女の胸の谷間に烏帽子を這わせる。すると、女は顔面をひっぱたく。その時、重方が見上げて女の顔をみる。

 なんとその女は彼の妻だった。
 そこから重方は、地べたに顔をすりつけ、ひたすら言い訳と謝罪を繰り返す。しかし妻はその懐に小刀を隠し持ちそれで重方を刺し殺す。

 血がこぼれるが、不思議なのだが地面が血だらけにならない。よくみると、白狐がこぼれる血をすっている。
 そして血が流れるのが終了すると、狐も女も忽然と消える。白狐が化かしていたのである。

世の中には、こんな場面が繰り返されている。胸に思い当たる人がいるようでしたら、伏見稲荷には行かないことをおすすめする。

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| 古本読書日記 | 05:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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