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北村薫     「太宰治の辞書」(創元推理文庫)

教科書で「走れメロス」を知り、それから「人間失格」を読み、太宰中毒になる。こんな経路を経て、太宰ファンは作られていくのだと思うが、この2作と同じくらい人気のある作品は「女生徒」ではないかと思っている。

 確かに読んでいて、楽しい作品ではあるが、いい年こいた大人が、思春期の女の子に扮して文章を紡ぐ。よくも恥ずかしくないものだと少し敬遠気味になる。

 まあ、それにしてもこれだけ女の子になり切って書けるものだと感心していると、この作品で、「女生徒」にはそのモデルとなる作品があることを知った。

 太宰のファンだった女学生有明淑が太宰のところへ日記を送る。この日記を太宰流にアレンジして「女生徒」という作品にして太宰は本にしている。

 この日記と女生徒は並べると、ほとんど同じ。これを太宰オリジナルの作品といっていいのか今でも論争があるようだ。

 太宰ファンの又吉直樹が、「女生徒」についてこんなことを言っている。

 太宰の魅力は何といっても一行で読者を引き付けるところ。
「いわばつかみというものをもっている作家さんじゃないかな。例えば女生徒に、これ、あの、『キュウリの青さから、夏が来る』という言葉がでてくる。これもう野菜のCMでやってもおかしくないですよね。」

 この部分、有明淑の日記では

 晩御飯、お肉を焼いたりして綺麗に作ってみる。キウリのサンバイもおいしくできた。『キウリの青さから夏が来る』といいたいような青さだ。
 初夏の青味は、胸がカラッポになる様な、うずく様な色をしている。

これが「女生徒」になると

 食堂でごはんをひとりで食べる。ことし、はじめてキウリをたべる。キウリの青さから夏が来る。五月のキウリの青味には、胸がカラッポになるような、うずくような、くすぐったいような悲しさがある。

 うーん。どうだろう。「悲しさがある」というところが文章で強く効いているからやはり「女生徒」は太宰の作品なのだろう。

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| 古本読書日記 | 06:17 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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