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浅田次郎   「ブラック オア ホワイト」(新潮文庫)

急死した旧友の通夜に参列した私は、同じく通夜の席で再会した旧友の都築君に誘われ彼の家へゆく。都築君はかなりの年月を残して商社を退職している。その退職までの彼の不思議な体験を私は聞くことになる。

 総合商社というのは「ア ジェネラル トレイディング カンパニー」と直訳される。つまり、日本の商社のように何でも扱うという商社は海外には無い。商社では役員まであがらない人は早死にをするが、役員になれば反対に長生きをするそうだ。そこに到達するまでに、大きく浮かんだり沈んだりする会社生活を送る。

 都築さんも、イギリスを皮切りにパラオ(観光)、インド、中国、日本をかけめぐる。その駐在時代、失敗を繰り返し、左遷されるが、我慢してまた前線で活躍できる機会を持つ。しかし、最後は日本で、海外からやってくる顧客の観光ガイド役に堕ちてしまう。

 その駐在時代の出張の時や旅行でパラオでのホテルで泊まると、黒いマクラにするか白いマクラにするか寝る前に聞かれる。黒いマクラにすると暗い底に堕ちてゆく夢をみるが、白いマクラにすると幸せな夢をみる。

 この物語、最初は夢と現実が離れているが、段々、距離が縮まり、最後は重なり合う。

 最後、都築さんはアメリカの権威のある医学者のダーニング夫妻を京都の老舗旅館に宿泊させる。

 その時、都築さんは灰色がかったくすんだ枕で眠り夢をみる。するとダーニング婦人が花売りを路上でしていて、それが武士の怒りにふれ、殺されそうになっている。そこに、都築さんが登場してダーニング婦人を守ろうとして武士集団に立ち向かう。そこで一旦宿の従業員に起こされる。ダーニング夫妻の部屋が騒がしすぎる。止めて欲しいと。ダーニング夫妻の部屋にゆくと、夫人の歓喜の声がなりわたっている。いくらなんでも、それを止めたりすれば、顧客であるダーニング医学博士と関係が悪化する。それはできない。そのときダーニング博士があらわれ、「ツヅキ、君は覗きをしているのか。」と言われ、部屋に慌てて戻り、夢の続きをみる。

 武士集団が逃げ、それを都築さんが追いかける。そこに雲水が通りがかり言う。
「追掛けると、返り討ちに会い殺されるぞ。」と。
「殺されたっていいよ。これは夢なんだから。」
「これは夢なんだからと言って、目がさめればこれは現(うつつ)だからと言っている。どちらも同じじゃないか。」と。

 朝目覚めると、驚くことにダーニング夫人が亡くなっている。夫が医学博士だから、心臓発作だと主張する博士の言い分が、疑問は残るが、権威で通る。その時、ダーニング博士は言う。

 「都築は日本で最も大切な友達となった。きっと私が帰国後、都築さんの会社にいいしらせが届くでしょう。」と。
 博士の大学から大量の医療器械の注文がくる。そして都築さんは博士のいるヒューストンに支社長としての内示がでる。

 しかし、都築さんはきっぱりと断り、会社をやめる。

 京都で聞いたという歓喜の声は、何とアーニング夫人の断末魔の声だった。その断末魔の声を出させたのは果たして誰だったのだろうか。夢と現実が重なる。

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| 古本読書日記 | 06:11 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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