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宮本輝    「いのちの姿 完全版」(集英社文庫)

完全版となっているのは、宮本の過去のエッセイ集「二十歳の火影」「命の器」を継承してシリーズとして完結したエッセイ集になっているからだ。

 宮本は大学を卒業後、広告宣伝会社に就職。その会社時代、競馬を観戦に行った帰りに、倒れパニック障害と診断される。今でも発症するこの障害のために会社勤めができなくなり会社を辞める。

  まだ会社勤めをしているとき、得意先回りの後、書店に立ち寄り純文学系の有名な文芸誌を手に取り、一流作家の巻頭をかざる短編小説を読む。自分ならこれを百倍面白くして書けると思い、障害もあるため、小説家になろうと決心する。

 そして会社をやめ、幾つかの作品を書いては、文学賞に応募するも、一次選考にも残らない。小さい年子の子供2人を抱えどん底状態に陥る。

 誰の言葉かはわからないが、彼方の高い峰を目指す時、人は必ず谷の最も深いところに降りねばならないという言葉がある。
 宮本はそのときその谷底に落ちた状態だった。
それでも、宮本も妻も、まったくの絶望状態にありながらも、楽天的であり、必ず作家への道が開けると確信していた。

 小林秀雄の言葉。
「命の力には、外的偶然をやがて内的必然と観ずる能力が備わっているものだ。この思想は宗教的である。だが、空想的ではない。」

 内的必然を感ずるのではなく観ずるということ。宮本にはどん底にあってもやがて高い峰をかけあがる自分の姿が見えたのだと思う。

 宮本は「蛍川」「泥の河」を執筆しているとき、咳や血痰に悩む。執筆後病院に行くと肺結核と診断され、半年間の入院生活と三年余にわたる自宅療養生活を強いられた。

 宮本はこの難局を克服して、当代一流の大作家になった。振り返ってパニック障害、肺結核を乗り越えて作家になりえたことの背景を3つ上げている。その3つ目。

 悪いことが起こったり、うまくいかない時期が続いても、それは、思いもかけない「いいこと」が突如として訪れる必要としての前段階であるということを確信していること。

 才能があり、更に苦しい日々の研鑽と情熱、努力があってこそ言える言葉である。どちらも皆無な私にはひたすら重い言葉だ。

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