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篠田節子    「長女たち」(新潮文庫)

  一人では、重い現実に我慢強く立ち向かう長女たちを描いた3中編集。
篠田らしく、どれも引き込まれ面白い作品となっているが、私は2編目の「ミッション」に魅かれた。

 主人公の頼子は、大学を卒業して素材メーカーに就職したが、就職と同時に母がガンで倒れ、発病後3年後に亡くなる。母が病気のときの主治医の園田の姿勢に心打たれ、会社をやめ26歳で医学部を受験、合格し、医師となる。その頃園田はインドの山奥の僻村に派遣され、医療と生活改善に取り組んでいた。

 その園田が高地で足をすべらし転落死する。頼子は園田の遺志を継ごうと同じ診療所の医師としてインドの僻村にやってくる。

 このインドの奥地の僻村では、近代医療の恩恵など皆無。それで、登場してくるのが薬草医。昆虫や草花それに鉱物を調合して薬をつくる。それに呪術を使い病気を治癒する民間医である。

 住民は朝起きて塩と脂肪分が大量に入ったバター茶を飲み一仕事、朝食も同様のバター茶に大麦の粉、昼もバター茶と麦粉、夜は夏場のみ、わずかの野菜の入ったこれまた塩分豊富な汁とバターのきいた麦だんごだ。・・・・彼らは一日じゅうバター茶を飲んでいて、それが屋外の厳しい作業に耐えうるエネルギー源となる。

 馴染んだ食生活だが、体には決していいとはいえない。

 その結果、この僻村での死は突然死ばかりになる。朝家畜の世話をしていた人が昼に突然倒れ、数分後あるいは二三時間後にはみんな息を引き取る。
 40代で突然死する人もあるが、50,60代では殆どの人が亡くなる。

 最新医療が受けられず、衛生環境もあまりよくない、だから、皆短命。一読、悲惨で可哀想に思うが、少し本を遠くにはなしてゆっくり読んでみるとそのことが我々に比べ可哀想なことなのか、心がぐらつく。

 突然死、ポックリは幸せな死に方だ。長寿になっても、認知症や身体を動かせず介護の世話になる。受ける人も、行う人も辛い。
 体にいっぱい管をつなげて生きながらえる。平均寿命を長くすること、長寿が幸せなことなのか、篠田さんの作品が私たちにするどい刃をつきつける。

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| 古本読書日記 | 06:13 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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