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木田元    「哲学散歩」(文春文庫)

私たちは、紀元前200年、今から2300年以上も前に書かれたアリストテレスの講義録を読むことができる。

1450年にグーテンベルグが活版印刷を発明、1455年にその印刷技術を使って、初めて「グーテンベルグ聖書」が製本出版される。それが行われるまで長い間書き写しか木版印刷で文献は受け継がれてきた。

古代ギリシャ、ローマ時代では文献が書き写されたのはパピルス紙だった。パピルスはエジプトのナイル川流域に生育するカリツユクサ科の水草で、茎は高さ2メートルにも達し、葉はすべて無葉身の鞘に退化して茎の根元にある。その茎の皮を剥いで白い髄を細かく裂き、その維管束を縦横に並べて重しをかけて乾燥し、さらにこすって滑らかにしたのがパピルス紙であり、エジプトの特産品だった。大きさはさまざまだが、A4くらいの葉を繋ぎ合わせ10M以上の長さのものもあった。

 筆記具は葦ペンと油で燃やした煤でつくったインクである。書き終えたものは掛け軸のように丸めて保管され、一巻、二巻と呼ばれていた。

 アルキメデスは大文字だけを使い、単語の間にスペースをおいたりせず、句読点を一切使わなかった。中世の写生士たちが小文字を使用し、解読がだいぶしやすくなったそうだ。

 それだけでも大変なことだったのだが、更にこの文献は悠久の歴史を、写生士の情熱により戦禍のなか、守られ継がれてきた。

 古代ギリシャからローマへビザンティンへ、そしてシリア、アラビア、中央アジア、北アフリカ北岸をぐるっとまわり、ジブラルタル海峡をへてスペインにわたり、そしてピレネー山脈を超えたり、シチリア島を経由したりして西欧世界に運ばれたのである。

 その間およそ1500年間。数えられないくらい手書きが繰り返され、ギリシャ語から、シリア語、アラム語、アラビア語。ラテン語に訳されながら写されてきたのである。

 アリストテレスのみならず、プラトン、ソクラテスの文献に接すると悠久の時間、空間と脈々と継いできた人間の歴史に感慨を抱かざるをえない。

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| 古本読書日記 | 06:21 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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