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佐藤正午    「5」(角川文庫)

主人公の小説家、津田伸一は著者佐藤正午を投影しているのだろう。この津田かっては直木賞を受賞した作家なのだが、女優をたぶらかしたり、間男のようなことをして、しかもそれを思わせる小説も書いて、世間の非難を浴び、出版会社から干される。今や、出版界と繋がっているのはある出版社の塩谷のみ。しかし津田は不遜な態度をとるため、最後には塩谷からも見放される。

 世間から顰蹙をかっても、津田のファンという女性や、或いは彼が行っている文章教室の生徒の女性から、切々とした恋心を訴えるような手紙や電話がくる。

 津田をいやな奴だと思うのは、今5人の女性が、程度は別として、津田と繋がりを持っているのだが、とにかく女性に対して、感情は一切排し、馬鹿にしているような会話に終始するところ。この作品を女性が読んだら、嫌悪感が心を覆い、途中で投げ出すのではと思う。

 それでいて、女性からの連絡が途切れると、毎日のようにメールや電話を繰り返し気を引こうとする。それで女性からも、間をおいて連絡が来る。

 不思議に思うのだが、津田が出版界から干され2年間が過ぎる。それから、この作品は650ページもある大長編。その間どれだけ時が経過しているかわからないが、世に小説、作品を発表できないでいる。

 普通は経済的に追い詰められるし、出版社にすがろうとするはずなのに、そんなところはあまりない。よくこれで焦りが来ないのか不思議でしょうがない。しかも、女性との逢瀬にはお金を使う。

 この物語に石橋という女性が登場する。この石橋はいつも手袋をしている。この手袋をとり掌を繋ぎ合わせると、石橋の生きてきた時代に自分が辿ってきた記憶が移植される。しかもそれが過去だけでなく、これから経験するだろう未来も移植され未来が思い出のようにあらわれてくる。
 津田が石橋と手をあわせ未来が最後に現れてくるのだが、これが単に石橋とまた付き合っているというところしか表現されていない。一番興味があるのは小説家としての津田がどうなっているかということ。流石に佐藤はそれは描けれなかったのか。

佐藤は遅まきながら今年直木賞を受賞した。

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| 古本読書日記 | 06:02 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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