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池井戸潤    「花咲舞が黙っていない」(中公文庫)

この小説は、読売新聞連載小説。一回の話を一か月でまとめることで出来上がっているのが第一話から、第五話まで。六話と七話はそこから抜け出し、話も普段の銀行から発生するちょっとした不祥事、事件から、急に銀行の持つ本質的な問題を抉り出す、重厚感のある物語になっている。そして六話と七話は一つの物語として繋がっている。

 主人公の花咲舞は、東京第一銀行の支店で5年間窓口業務を担当し、本店の支店統括部臨店チームに配属され、支店の業務監査や指導を行うことになる。上司は、支店時代も上司だったことのある相馬。

 花咲は地位も権力にも、出世にも関心が全くない。そして、現場の視点で上司には、「間違っている」と率直に言い、その率直さと真逆な動機で動く銀行とぶつかり、行内では、はねっかえりとして煙たがられる。

 臨店チームから異動して、横浜の希望が丘という出張所に勤務している相馬のところに花咲舞が臨店にやってくる。

 そこで、地元のシマタニ不動産という会社へ2億円の融資の伝票を発見する。更に運転資金として数か月おいて5億円の融資がされている。当然これだけ大きな融資だから、何に使うか明確な目的があり、それにより経営計画がどうなるのかその効果も綿密に添付されていなければならないのに、全く無い。更に一出張所で決裁できる金額範囲を超えており、当然本店決裁となるのだが、こんないい加減な稟議が、本店でも問題なく決裁されている。

 ここから舞が八面六臂の活躍をして、真相を暴きだす。実は、このお金は運転資金にはまったく使用されておらず、シマタニ不動産はその頃、粉飾決算が暴露され経営的に難しい局面にたたされていた東東デンキの株取引に使われていたことを突き止める。

しかもそこで大儲けしたお金は、一部政界の重鎮石垣代議士にも渡っていた。更に、粉飾が大問題になり株が暴落するとの情報は東京第一銀行から石垣サイドに事件の発覚2か月前にもたらされたようだとの観測も得る。

 こんな不正やインサイダー取引がまかり通るのはいけないと舞は報告書をあげるが、それは無かったことにしろという上からの指示があり、報告書は握りつぶされることになる。

 銀行は、顧客の接点となる行員で企業ができあがっていなくて、行員が顧客を離れ、行内政治や妖怪重役に連なり、隠ぺいなどが上手くできるかどうかで行員や銀行の価値が決まる。それは、どう表面を塗り替えても、本質は全く変わらず、舞のようなはねっ返りには大きな壁となる。そこを現実とは離れて、そのはねっ返りの正義が最後には勝利するところに池井戸の物語の痛快さがあるのだが、現実を思うと虚しさが深くなる。

 それにしても株というのは上がるから儲かるものとばかり思っていたが、下がることでも大儲けする場合があることをこの作品で知りびっくりした。

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| 古本読書日記 | 05:59 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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