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楡周平      「陪審法廷」(講談社文庫)

裁判員制度が何の目的で必要なのか、このアメリカの陪審員制度を扱った物語を読んでよくわかった。

 中米のグアテマラの最貧層、物乞いで毎日の生活を凌いでいた少女パメラは、1400kmを超える道を年上の子と歩いて、アメリカに密入国する。そして、縁あってフロリダ州サラソタに住むクロフォード夫妻の養女となる。養父のクレイトンは外科医、養母のリサは看護師。養父母はやさしかった。ストリートチルドレンだったパメラは信じられないほどの幸せな生活を送った。

 しかし、その幸せが12歳のとき、ハリケーンの夜に暗転した。養父クレイトンにレイプをされたのである。それから、3年間、リサが夜勤の日には、必ずクレイトンに犯されることになる。パメラはリサに告げたかったが、もし告げると2人の仲が引き裂かれ、自分がまたみじめな生活に陥ってしまうのではという恐怖で、どうしても言えなかった。しかし、パメラは段々クレイトンに殺意を持つようにになった。

 パメラの隣の家には、同級生の牧田研一一家が住んでいて、パメラと研一は幼馴染でとても仲が良かった。
 卒業寸前にパメラが研一にクレイトンのレイプを告白する。研一はパメラに代わりクレイトンを卒業パーティーの夜に殺すことを決意する。そして、殺害はしたが、その現場が見つかり警察に逮捕される。

 フロリダ州には少年法が無く、殺人は終身刑か25年の刑しかない。
ここから陪審法廷が開始される。法律からみると、研一の殺人は明白で、25年か終身刑での服役しか選択肢は無い。

 裁判はその線により進行する。この陪審員のなかに、60歳になる由紀枝テンプルという日系アメリカ人がいた。そして彼女は突然他の陪審員に向かって言う。

 「この事件の悪人は明らかにクレイトンである。そのクレイトンの悪の行為を断ち切るために、研一は殺人を犯した。そのために研一は15歳から生涯刑務所で暮らすか、40歳になるまで刑務所で暮らすかになってしまう。これは理不尽なことである。」と。

 これが陪審員を動かす。そして法律を超えて研一は無罪となる。

裁判官は法律の条文だけで、判決を決める。しかし、法律は万全ではない。市民の感覚は法律に勝ることがある。なるほど裁判員制度とはこんな判決を下すためにあるのか。

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| 古本読書日記 | 05:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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