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吉田修一   「森は知っている」(幻冬舎文庫)

「太陽は動かない」と同様、鷹野一彦がこの作品でも主人公の物語。

南の島で高校生活を自然一杯の暮らしの中で満喫している鷹野、詩織という転入生との淡い恋もあって、表面的には充実した生活をしていた。しかし裏ではAN通信という諜報機関から厳しい訓練を受けていた。一緒に訓練を受けていた柳が、障碍者の寛太とともに突然失踪する。柳が何故失踪したのか。寛太はどうなっている?そう思い悩んでいるとき、鷹野に初の試験ミッションが諜報機関から下り、それを全うできたら諜報機関員としての地位が得られることになる。

 実は鷹野は2人兄弟。幼い時に、しょっちゅう父に暴力を振るわれ、恐怖の生活を弟と強いられていた。その父親と母は離婚するが、今度は母親が外から鍵をかけこの2歳と4歳になる子どもを閉じ込め失踪する。

 そして鷹野兄弟が発見されたときには、2歳の弟は鷹野に抱きかかえられていたがすでに餓死していた。弟は鷹野に抱きかかえられたまま死んだ。

 こういう悲惨と苦痛だけの生活を送った子どもの殆どは性乖離同一障害に陥る。
人格がバラバラに形成される。そして、一瞬一瞬を生きるようになる。時間を細かく区切ることにより、暴力に懸命に耐える。暴力の嵐が過ぎると、懸命に今起こったことを忘れようとする。

 今起きていることが、昨日起こったこととどんな関連があり、どうなっているのかと考えることは無い。今日一日が終わる。そしてまた今日が始まる。人生は今日の積み重ねでしかない。

 鷹野は、AN通信の命令により、死んでもおかしくないようなめに遭遇する。鷹野は命令が遂行されたときに、諜報機関員になるかならないかの選択ができる。鷹野は機関員になる。

 機関員になると胸に小型の爆発物を埋め込まれる。当然裏切ったり命令遂行ができなかったらその爆発物が破裂する。それどころか、毎日正午に今何をしているか機関に連絡を怠ると爆破がなされる。

 まさに今日をまず生きるという生活を当然のように鷹野は選択する。

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| 古本読書日記 | 06:24 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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