FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

重松清   「幼な子われらに生まれ」(幻冬舎文庫)

重松は初期の「見張り塔からずっと」や「エイジ」、「ビタミンF」で、暮らしの中で、抱える矛盾や苦悩を取り出し、決して解決にはならないが、真摯に問題と向き合い、悩みに寄り添って生きてゆく人々を描いていた。真面目に悩む素晴らしい作家がでてきたものだとすぐ虜になったことを思い出す。

 最近は、やたら色んな場面で泣きがはいり、それを読者にも一緒に泣いてもらおうとあざとい作品が多くなり、つまらない作家になったものだと少し距離を置くようになってしまった。泣かせる前に、どうして泣いてしまうのか、その心模様を前は懸命に重松は書いていた。

 久しぶりに重松の作品を手にとって驚いた。この作品は、初期の重松の現実をしっかりとらえようと頑張っている昔の重松の作品に戻っていた。と、思ってよかったと思ったのだが,この作品、重松の初期に書いた作品だと知りなあんだやっぱりと思ってしまった。

 この作品テーマはありきたりだ。

主人公の私は、元妻でアメリにも留学して、現在大学の心理学の助教授で最近はテレビのコメンテイターをして時代の先端を走っている友佳がいた。この友佳との間に沙織という八歳の娘がいる。友佳との約束で、年4回沙織に会う。

 一方私には、再婚した現在の妻奈苗がいて、その奈苗の連れ子薫、恵理子とともに4人家族で暮らしている。奈苗は前夫のDVに耐えかね、離婚している。

 そんな時、奈苗が妊娠する。奈苗の連れ子は自分が本当の父親ではない。沙織は父親だが、現在は別の家族の元で暮らしている。そして、奈苗の連れ子薫は私を父親と認めていなくて、本当の父親に会いたがっている。加えて、恵理子に父親が今の私ではないことを伝えてないことに薫は怒っていて、家では私や妻に距離をおこうとしている。

 しかも、私は仕事に打ち込む姿勢が足りないと、出向の内示を受ける。奈苗に子どもをうませるべきか暗澹たる薫との関係に悩む。

 その悩みを忘れようと、私は赤ちゃんプレイの店に溺れる。

重松は実に丁寧に私の苦悩と、家庭での孤独を描く。そして、すべてが解決するわけではないが、子供たちにも作為に走ることなく、おじけづくとことなく、勇気をもって真正面から対応することが、男、夫にとって大切なことで、それが彼の成長につながることを誠実に描く。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 05:59 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT