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桂望美     「エデンの果ての家」(文春文庫)

聖書の「カインとアベルの物語」というより、それをモチーフとして書かれ映画化されたスタインベックの「エデンの東」が意識されできあがった物語。

 大企業に働き、定年を過ぎても仕事の継続を会社より依頼され、海外にもでかける父親敬一。母直子。弟の秀弘との4人家族で育ったのが主人公の葉山和弘。
 和弘からみて、両親の期待と愛情のすべては秀弘に注がれ、孤独と疎外感にさいなまれ育ってきた和弘。

 秀弘は両親の期待にたがわず、良い大学をでて大企業に就職。しかし新人教育指導でパワハラをしたという会社の判断で閑職に追いやられ、失望して、会社をやめる。プライドが高い秀弘は、その後再就職を目指したが、プライドが邪魔をして未だに失職中。

 和弘は、大学の園芸科にはいる。その時点で両親は全く和弘への期待はなくなる。そして和弘は仲間とともに卒業後園芸会社を興す。

 そんなとき、母親が失踪。そして山林より遺体が発見され、殺人犯として弟秀弘が逮捕される。さらに事故死として処理されていた秀弘の恋人も他殺に変えられ、秀弘はその恋人殺しでも犯人として逮捕される。

 ここから、弁護士もはいって犯人は秀弘ではないという信じる和弘と父親とで真相追及がなされていく。父親は秀弘は優しく、優秀で、母親との関係からみても、とても母親を殺すなどということはありえないし、殺人などするはずがないと信念をもって事実にぶつかる。

 和弘もそう思わねばならないとは思うが、どうも2件とも殺したのは秀弘ではないかと疑いながら事実にぶつかってゆく。

 その中で、知っているようで、何も知らない家族のことを父も和弘も認識してくる。その軋轢とだんだんそれぞれの家族のひとりひとりの真実が真相追及のなかでわかりそれによって起こる変化がこの物語の読みどころ。

 和弘が小学校の運動会のリレーで一番になった直後トイレに行くと母親がトイレからでてくる。和弘は自分の競技を母親がみていてくれなかったことに衝撃を受ける。そして、それがその後20年間、ことあるごとに浮かんできて、自分は見放された子だったと苦痛に悩む。

 この真実追及の過程で、段々父との距離が埋まり、その最後で、小学校の運動会でのことを父に吐露する。それから数日たって、父から運動会のビデオを渡される。そして母はちゃんと和弘の走りをみていて大声で応援していたことを知る。

 競技の終わった後、一言「どうして見てくれなかったの」と聞けば済んだことが、20年も悩みの奥底にあり続けさせたことが重い。

 しかし、その一言が言えずずっと苦しむということはたくさんあるものだと思う。

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| 古本読書日記 | 06:12 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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