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馳星周     「虚の王」(光文社文庫)

主人公の隆弘は、高校生の頃「金狼」という名のグループで渋谷を唸らしていた。あるとき、ヤクザを刺殺し、隆弘だけが少年院にいれられる。そして少年院をでた今は、ヤクザの末端で薬を売って毎日を凌ぐところまで落ちている。鬱屈とした日々の連続でいつも「いったい俺は何をしているのだろう。」「何者かになりたい。」と呻いている。

 この隆弘の目の前に現れたのが、隆弘がこれぞ「何者」として思える栄司。一般の人間は、まずい出来事が起こると、思考がとまりパニクる。それを脱却しようと、感情が恨み、憎しみ嫉妬、恐怖に転化して、最後には殺人に行きつくことになる。

 ところが栄司は何がおころうとも、感情が揺れることなく、超然として存在する。体つきも華奢で弱そうにみえる。だけど頭脳の切れ味は鋭い。

 強烈な掃除機のように、まわりに人を寄せ付け吸い取る。吸い取られた人たちは初めは何も気が付かないのだが、必ず最後には破滅の道を辿る。

 すごく恐ろしい人間に栄司は思えるのだが、実体がとらえきれない。だから「虚の王」ということになるのか。今日もニュースが報じていたが、自分でも人が殺せるかためしてみたかったといって全く面識の無い人を殺した事件があった。

 因果応報、恨みつらみ、憎悪からの人殺しではなく、何となくというわけのわからない事件が多くなった。このわけのわからないというのが「虚」に近いイメージのような気がしないでもない。

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| 古本読書日記 | 06:05 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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