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吉田健一   「わが人生処方」(中公文庫)

食うために、仕事をする。よく言われることである。食わなければならないから仕事をして、そしてその仕事を続ける、就職するためには教育を受けなければならないから学校へ行き、段々さかのぼれば、我々は食うために生まれてきたように思える。生まれてきたからには、食わねばならない。生きるということは、仕事をするということと同一である。

 ごくまれに、芸術やスポーツの分野で卓越した力があり、それを生業にして、食っている人は確かにいる。しかし、殆どの人は、個性とか能力とは別に、就職して、集団の中で仕事をして、定年を迎える。

 この姿を寂しいこととか、つまらないというように非難するのではなく、食うためには当たり前の姿なのである。

 このエッセイ集は吉田が50歳のときに書いたものを集めている。吉田は、50歳までは食うために、英国文学を研究し、没頭、集中し、世に論文を発表した。

 37歳での「英国の文学」。43歳での「東西文学論」、47歳での「英国の近代文学」49歳での「文学概論」。

 そして50歳で、自分の食うためにやってきた仕事は終了したと吉田は宣言。後は余生。
余生は自分の想いの赴くまま、肩の力を抜き、翼を拡げいろんなものを書いていきたいと言う。

 仕事として成し遂げた業績も素晴らしいものだとは思うが、50歳を過ぎてからのほうが吉田の作品は味わい深くなり、賞賛される作品を世におくりだした。

 「絵空ごと」「本当のような話」「金沢」「埋もれ木」「旅の時間」「怪奇な時間」そして名作「時間」「変化」。
 吉田文学が一斉に花開いた。

 惜しむらくは余生がたった15年しかなかったことだ。

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| 古本読書日記 | 05:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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