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馳星周    「約束の地で」(集英社文庫)

これがあの馳星周?馳の特徴は、物語を際立たせる風景とか心象を描かず、ひたすらぐいぐい画面のみを展開させ、風景や心象は読者が描いてくれという文体である。

 ところが、この短編集は馳の印象を一変。心の動きや揺らぎが、北海道の暗い自然の風景をBGMにして、描写され、同じ北海道作家の桜木柴乃を彷彿させるほどの内容になっている。

 どの短編も、悲しみ、絶望、恐怖、切なさと、人生をどうあがいても浮揚させることができない人々を描く。

 中学生15歳で、虐めにあい、精神的におかしくなり、時々言葉がでなくなった智也。父が浮気をしていて、愛想をつかした母は妹を連れて家をでる。ということは智也は母に捨てられたということ。

 学校へも行かず、一人でサッカーボールを蹴って遊んでいたところ、雅史というけがをしてサッカーを断念した高校生と出会う。この高校生に無理やりスクーターを5万円で売りつけられる。

 もう世の中がいやになり、愛犬レオをバックにいれ、死のうと夜の道路をスクーターで走る。20KM以上走ると苫東開発地帯になる。苫小牧が内地の企業進出をあてにして開発したが、石油備蓄のタンクがあるだけ。柵で仕切られているがその先は草茫々の荒れ果てた地。 ここぞ死に場所と入ってゆく。すると愛犬レオが土を懸命に掘り返す。そこから人間の骨がでてくる。

 そこで智也は思う。こここそ「世界の終わり」の地だと。自分とレオ以外の人間の骨をすべてここに埋めて、レオと自分だけでこの世界の終わりで生きてゆこうと。

 それで、もっと埋める骨が欲しくなる。骨はどこにある。祖母や祖父が埋められている墓地にたくさんある。それで、頭陀袋をもって墓地に行き骨を掘り返し、袋につめ「世界の終わり」にゆき、その骨を埋める。

 レオとの楽しい生活を、骨を埋めている間想像して楽しくなる。

しかし、骨運びの最中、警察の尋問につかまる。そして、智也のテポケットには鋭いナイフが2つ隠されていた。

 悲しいけど、ほんのわずかでも夢がみられた、その時は本当に幸せだった。

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| 古本読書日記 | 06:08 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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