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小川洋子編著    「小川洋子の陶酔短編箱」(河出文庫)

小川洋子が愛する短編を、短いが愛情こもった解説とともに収録している。半分は既読済み作品。

泉鏡花の「外科室」。主人公の伯爵夫人が外科室で胸の手術を受ける。先生が麻酔をかけようとするが、夫人が拒否する。手術中に、眠りの中であらぬことを喋るかもしれないからと。

先生や看護婦や身内の人が説得するが、頑として拒否。仕方なく、麻酔無しで手術が開始される。そのときの様子が、口語と文語が重なり合って描かれ、妖艶さがせまってくる。最初に読んだときの強烈な衝撃がまたよみがえった。

 この短編集の中で印象が強く残ったのは、庄野潤三の「5人の男」に登場する4番目の男N氏。

 目を手術して10日間N氏は勤め先の学校を休んでいた。その9日目、大雨が降り家のそばの小川の水嵩が増していた。そんな時、奥さんが4歳になる子どもを見ててよと買い物にでかけた。N氏がうたた寝をする。そして目が覚めると4歳の子がいない。外へでる。近所の家の人たちも出てきて子供を探す。

 やがて、子供の履いていた下駄がみつかり、そこでうつ伏せになっている子供を見つける。

医者に電話する。医者が来るまで、懸命にN氏は人工呼吸をする。30分後に駆け付けた医者も人工呼吸をする。しかし生き返らない。医者が「死んでいます。」と宣言して帰ってしまう。集まっていた人たちも三々五々立ち去る。

 最後になってN氏は子供の足首を持ち逆さにして振り回す。すでに、水は吐かせてあり、水はとびだして来ない。

 N氏が子供を振り回したのは、全く考えることもなしに、無茶苦茶をしたのだ。

振り回していたら子供が「くっ」と声を出したように感じた。更に振り回しているとまた「くっ」と。そして死んだとあきらめていた子供の心臓が動き出したのである。

 親の執念と無茶苦茶が医師の宣言を越えた。良かったと本当に思った。

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| 古本読書日記 | 05:51 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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