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川口松太郎    「鶴八鶴次郎」(光文社文庫)

表題作を含め、中編3篇が収録されている。表題作がその中では印象に残る。鶴八と鶴次郎は鶴八の三味線と鶴次郎の男太夫というめずらしい組み合わせの新内語りコンビ。この2人が重なり合って演ずる新内が、絶大な人気があり、客を多く呼ぶ。

 2人は惚れあっているのだが、どちらも頑固一徹な性格でしょっちゅうぶつかりあい喧嘩ばかりして、周囲をハラハラさせている。

 鶴次郎は、いずれ寄席をひとつ持ちたいという夢がある。鶴八は器量よしのため、嫁にしたいという男たちが引きも切らない。鶴八は芸一筋で人生を歩み、独身を通すということを公言している。

 しかし、鶴次郎の夢を叶えてあげようと、コンビを解消し、金持ちの懐石料理屋に1万5千円の結納金と引き換えに結婚し、その金を鶴次郎に与え寄席の資金にしようとする。

 鶴八は、三味線が弾けない辛さと、募る鶴次郎への恋心に耐えきれず、3年で嫁ぎ先から逃げる。

 そして、鶴次郎と一緒に舞台へ立つ。往年の集客まではいかないが、それでも客の2人の復活の期待は強い。

 ところが、舞台を降りた鶴次郎は、鶴八の三味線を下手とこき下ろし、もうコンビでは舞台にたたないと言う。鶴八は、三味線の技術は全く落ちていないのに、何故鶴次郎がそんなことを言うのか理解できない。

 鶴次郎は、自分の声の質が落ちたことを知っていた。3年前の拍手喝采を浴びた芸は自分には最早できない。それで鶴八との共演は無理だと思ったのだ。

 芸というのはピークがあるのだ。それを過ぎたらとても客には披露できない。こんな真剣な芸人は現在にはいない。その決断の潔さにはただただ驚く。

 川口松太郎は第一回の直木賞を受賞している。当時は作品でなく作家に与えられていた。

直木賞が受賞できたのは、この作品が大きく寄与したと直木賞研究家の川口則弘があとがきで書いている。

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| 古本読書日記 | 05:50 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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